広島平和記念資料館は問いかける 志賀賢治著

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広島平和記念資料館は問いかける

『広島平和記念資料館は問いかける』

著者
志賀 賢治 [著]
出版社
岩波書店
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784004318613
発売日
2020/12/21
価格
946円(税込)

書籍情報:openBD

広島平和記念資料館は問いかける 志賀賢治著

[レビュアー] 稲野和利(ふるさと財団理事長)

 広島平和記念資料館(原爆資料館)を訪れると、粛然とした気持ちになる。そしてその度毎(ごと)に思う。ここには決して忘れてはいけないものがあると。

 12代目館長の手になる本書は、資料館の歴史を振り返り、その使命について静かに問いかけるものである。昨年で被爆から75年、開館から65年という時間が経過した。それは記憶の継承を模索した歴史でもあった。2年前には大規模展示更新が行われたが、その歩みは数々の紆余(うよ)曲折を経ている。背景には原子力平和利用関係の展示の是非など、資料館の性格付けをめぐる様々な議論があった。現在は、初代館長がこだわった「実物資料」展示に回帰しているが、そこには「原爆が広島から奪い去ったもの」を理解するためには遺品を通じて死者の声に耳を傾けることが必要だという信念がある。

 展示室や展示品の解説が詳細だ。まるで自分がその場にいるような臨場感がある。読者は「人間的悲惨」というテーマに触れ、「ヒロシマを知ることは未来を考えること」という言葉の意味を理解することができるだろう。(岩波新書、860円)

読売新聞
2021年2月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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