3か月に及ぶ臨時休校 現場で何が起きていたか

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学校が「とまった」日

『学校が「とまった」日』

著者
中原淳 [監修]/田中 智輝 [著、編集]/村松 灯 [著、編集]/高崎 美佐 [著、編集]
出版社
東洋館出版社
ジャンル
社会科学/教育
ISBN
9784491043258
発売日
2021/02/01
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

3か月に及ぶ臨時休校 現場で何が起きていたか

[レビュアー] 篠原知存(ライター)

〈やっぱり、学校がないとやる人とやらない人っていうのは絶対差が開くんだろうなって。だから、学校って結構大事なんだなって〉

 本書で紹介される中学3年生の言葉だ。失って初めて大切さを知るのは人生の理だが、子供に限らず、同じような気持ちになった保護者や教育関係者は多かったのでは。

 全国の約9割の学校が一斉に「とまった」。コロナ禍による前代未聞の臨時休校は、昨年2月末から最長3か月にも及んだ。教育中断の間に現場では何が起きていたのか、子供たちの生活や学びにはどんな影響があったのか……。

 監修者の立教大教授が中断期間中に立ち上げた研究チーム「学びを支えるプロジェクト」は、児童・生徒や保護者、教員、教育系NPOを対象に調査を実施。子供たちの生活実態や学校の取り組み、保護者の関わり方などについて検証した。データを丁寧に読み込んで、さまざまな対処法の成否や取るべきだった行動などを明らかにしていく。

 緊急事態宣言が解除されたとしても次がないとは言えない。他の厄災が襲うかもしれない。どんな状況下でも学びを継続するために、どう準備すればいいのか。作戦立案のための基礎資料として、すべての保護者と教育者に一読をお願いしたい。

 加えて、本書は「学び論」として読んでもかなり面白いはずだ。

 ある先生は休校をきっかけに自省する。〈これまで当然のようにやってきたことが本当に生徒の主体的な学びにつながっていたのか〉

 その一方、学校に通うことで毎日5時間程度は確保されていた学習時間が減り、中には「ほとんど勉強しない」子供がいたにもかかわらず、〈半数程度の高校生が休校中に「成長実感」があったと回答している〉のは、とても興味深い。

 学びの現実と理想を、しっかりと問い直す機会にできるなら、失われた日々も無駄にはならない。

新潮社 週刊新潮
2021年3月18日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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