<東北の本棚>手腕礼賛 逸話に人間味

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職業政治家 小沢一郎

『職業政治家 小沢一郎』

著者
佐藤章 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784022516992
発売日
2020/09/10
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>手腕礼賛 逸話に人間味

[レビュアー] 河北新報

 2009年の衆院選で政権交代を果たした旧民主党の小沢一郎衆院議員(岩手3区)を取り上げ、小沢氏が手掛けた政治の本質に迫ろうと試みた一冊。
 元朝日新聞記者の著者が小沢氏や周辺者に重ねた膨大なインタビューを基にし、「明治以来の中央集権、官僚支配を変えるため、官僚主導の予算編成という聖域を壊すことに成功した」と結論付けるが、小沢氏礼賛のトーンが強過ぎて読み手を選びそうだ。
 小沢氏の手腕を示す政策の一つとして、著者は旧民主党の看板政策で、農業対策の戸別所得補償制度を挙げる。不要論がありながら自民党が農業票対策で続けてきた土地改良予算を大幅に削り、農産物の自由化を視野に同制度の財源に回したことを強調。政権交代初年度のため、省庁間に摩擦を生まないよう農水省予算の中で組み替えたとし、「年度を経ていたら真に政治主導の予算編成ができたろう」と振り返る。
 政策に加えて小沢氏を取り巻く政界事情や、その歴史的背景を描いた重厚な内容が多いが、小沢氏の幼少期や家族関係も本人の言葉でつづられていて面白い。地元の奥州市でナマズ捕りに興じた子ども時代。国会議員だった父佐重喜氏が日米安全保障条約の改定に携わったため、東京の自宅にデモ隊が押し寄せて門扉が壊されたのに、最後まで避難に抵抗した高校時代。人間味を感じさせる逸話に引き込まれる。
 「国民の側に立った、まさに現代のスサノオノミコトだ」と記すなど、小沢氏を持ち上げる論評が目立つ。正義の改革者がその後の検察の「不当捜査」で追いやられたという歴史観に立脚しているからだが、旧民主党政権下は小沢氏を中心とした政局に揺れ動いた3年間だったことも確かで、同時期に国会で取材した経験を持つ評者には違和感が拭えない。(桜)
   ◇
 朝日新聞出版03(5540)7793=1870円。

河北新報
2021年3月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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