英語独習法 今井むつみ著

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英語独習法

『英語独習法』

著者
今井 むつみ [著]
出版社
岩波書店
ジャンル
語学/英米語
ISBN
9784004318606
発売日
2020/12/21
価格
968円(税込)

書籍情報:openBD

英語独習法 今井むつみ著

[レビュアー] 飯間浩明(国語辞典編纂者)

 「日本語にはなぜフワフワ、トロトロなど擬態語が多いんですか。英語には少ないのに」。そんな質問を受けることがあります。私はこれまで、不得要領に次のように答えていました。「英語では簡単な動詞で細かいニュアンスを表現できますが、日本語では難しい。代わりに、擬態語を使うんですよ」

 本書の説明はもっと明快です。つまり、日本語・英語の話者は構文のスキーマ(枠組みとなる知識)が違うのです。頼りなく歩く様子を、日本語ではフラフラ、ヨタヨタ、ヨロヨロなど擬態語で表現し分けます。一方、英語ではstagger, reel, lurchなど動詞で表現し分けます。文を作る発想が日英で違う。このことを知れば、英語の動詞をたくさん覚える必要性も分かります。

 著者は、認知科学の立場から、よくある英語学習法が合理的でないことを指摘します。たとえば、日本人がよく間違えるパターンを100覚えたとしても、それ以外に無数に起こる間違いは防げない。それよりも、表面に現れない英語スキーマを身につけるべきだと説きます。

 氷山の水面下の部分のような、見えない英語スキーマを身につける方法なんてあるのか。著者が多くの紙幅を割いて紹介するのが、コーパス(ネットで閲覧できる言語資料のデータベース)を使う方法です。

 たとえば、あるコーパスでlearn(学ぶ)とstudy(勉強する)をキーワードとして検索すると、前者はlesson(教訓)とよく結びつき、後者はart(芸術)とよく結びついています。コーパスに入っている例文を読んでいくうち、ふたつの語の違いが体感できるでしょう。

 実は私も、日本語の意味・用法を考えるため、自作の日本語コーパスで同じことをしています。特定のことばを含む例文を探索していると、そのことばについての理解が深まっていく感じがあります。本書で説く英語独習法は、日本語を含む他の言語にも応用できるわけです。

 ◇いまい・むつみ=慶応大教授。専攻は認知科学、言語心理学。著書に『ことばと思考』『学びとは何か』など。

読売新聞
2021年3月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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