結婚や出産、離婚、死別…。人生の時々で形を変えていく家族の姿を描いた小説だ。
前半の主人公は初めての子供を妊娠した由紀子。幸せに暮らしていたが、双子の次男と三男を授かったころから夫との関係が壊れていく。後半は由紀子の長男、智晴が語り手。シングルマザーとして家計を担う由紀子に代わり、母親役をこなす一方、再婚した父に対し割り切れない思いがあった。だが、弟や父の再婚相手の子供の思いに触れ、智晴はちょっと複雑な自分の家を肯定できるように。「どんな形でも家族」だという著者の温かいまなざしが心に染みる。(KADOKAWA・1700円+税)
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2021年3月14日 掲載
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