日米で違う交渉術、日本人が身につけたい上手なふるまい方

レビュー

2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

負けない交渉術

『負けない交渉術』

著者
大橋弘昌 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784023319271
発売日
2021/02/05
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

日米で違う交渉術、日本人が身につけたい上手なふるまい方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

どんなときも優位な状況をつくれる 負けない交渉術』(大橋弘昌 著、朝日新聞出版)の著者は、ニューヨーク州の弁護士。19年前に事務所を興して以来、日米間を行き来しながら、アメリカでビジネスを行う日系企業を主要クライアントとして法務サービスを提供しているのだそうです。

日本企業と仕事をするなかで実感したのは、日本人が作り出す製品やサービスの品質へのニーズの高さ。ところが同時に、交渉下手ゆえにそれに見合った利益が出せていない会社が多いことを目の当たりにしたのだといいます。しかしそれでは、国際企業がしのぎを削る競争時代を生き抜くことはできません。

優れた製品やサービスを作り出した後は、それを適正な価格で売り、利益を出し、製品やサービスの元となる技術を盗用されないように守らないといけません。それらはすべて交渉の役割です。できない会社は没落していくのです。(「はじめに」より)

もちろんそれは、日本国内におけるビジネスも同じ。交渉をためらう方もいらっしゃるかもしれませんが、決して図々しいことではなく、国際社会ではお互いが自分の利益のために主張をするのは当然のこと。

それどころか、優れた主張をしたり、交渉に長けた人は相手から尊敬されることにもなるそう。逆に交渉できなければ、信頼関係にも影響が及ぶ可能性があるということです。

本書は、2007年に発売された『アメリカで百戦錬磨の日本人弁護士が教える 負けない交渉術』(ダイヤモンド社)を改題・加筆修正したもの。

きょうはそのなかから、第2章「自分を“手強い相手”と思わせるふるまい方」に焦点を当ててみたいと思います。

対等な態度が相手の敬意を引き出す

アメリカでビジネスパーソンと交流している著者には、つくづく感じることがあるのだそうです。アメリカには、どんな人が相手であっても堂々と向き合う人が多いということ。

英語には日本語のような敬語がないので、そのあたりにも原因があるかもしれません。とはいえ、上下関係というものを考えていないかのようにも見えるというのです。

そして、さまざまな経験から学んだのは、社会に存在するさまざまなステレオタイプ的なヒエラルキーなどを気にせず、交渉の目的のみに集中すること。さらには、誰が交渉相手であったとしても、堂々と対峙すべきであるということ。

相手としっかり向き合わなくてはならないのは、対立する相手との交渉だけでなく、交渉相手と仲良くしたいときでも同じです。 そういったときも自分の利益を犠牲にしてはいけません。堂々と言うべきことを伝え、フェアな取引を目指しましょう。

むしろフェアな取引をするために一歩も譲らないという態度をとれば、相手から尊敬され、それゆえに仲良くもなれるのです。

安易に譲歩しないことで、相手との関係がぎくしゃくしても、その関係は取引条件が決まった途端にどこかに消え去ってしまうでしょう。(82ページより)

欧米流の交渉の場においては、テーブルを挟んでガンガンやりあうもの。しかし合意に至ると、それまでの険悪な雰囲気が嘘だったかのように、あたかも長年の親友のような素振りで握手し、談笑を始めたりもします。

そういった場合の握手は、それまでどれだけ空気が張り詰めていたとしても、険悪な雰囲気になっていたとしても、「それらは水に流し、これからは仲よくしよう」という意思表示だというわけです。

「日本人の中には、意見に食い違いが生じると、友情もそこまで、と考える人が多い。しかし欧米人は、相手を友達だと思えばこそとことん議論し、徹底的に思うところを説明しようとする。

……政治家も官僚もビジネスマンも、日本人はまだまだこの点では不慣れのような気がする」(83〜84ページより)

これは、著者が敬愛する経営者だというソニーの故・盛田昭夫氏によるベストセラー『MADE IN JAPAN』からの一説。ここからすでに30年が経過していますが、その間に「果たして日本人は、変わったのでしょうか」と、著者は疑問を投げかけています。(79ページより)

どんな相手も決してナメてはいけない

交渉相手に対する態度を、ステレオタイプを基にして変えるべきではないと著者は主張しています。

たとえば年齢。いまだに日本人の間では、ビジネスの場で年功序列的な考え方が根強いものです。交渉相手が自分より年下だった場合、なんとなく偉そうな態度で望んでしまう人がいるのは、おそらくそのせい。

しかし、アメリカでは年齢は無関係で、若い人が年上の人を立てるということはあまりないといいます。そして年上の人も、若い人が自分を立ててくれなかったとしても、なんとも思わないものでもあります。つまり、あくまで実力主義だということです。

もちろんそれは、アメリカ人が人生の先輩を敬わないという意味ではありません。当然のこととして年上の人は敬い、大事にするけれども、ビジネスの場では「年上だから偉い」ということはないというわけです。

ところで日本では年功序列的な考えや「年上が偉い」というような風潮がある反面、60歳とか65歳などの一定年齢に達すると、まだ働ける人でも退職を迫られます。

しかしアメリカの現状を知る著者は、そうした風潮にも反発しています。一定年齢に達すると一様に能力が下がるわけではないのだから、こうした雇用文化は一刻も早く改めるべきだと。

アメリカには、年功序列的な考えがありませんし、たとえば定年退職制も違法です。

社員がある年齢に達したことを理由に、退職させてはいけません、会社は「65歳定年制」を設けることができないのです。

(中略) アメリカにおいては、採用においても、あるいは退職においても、年齢は関係ないのです。(95ページより)

つまり交渉においては、あらゆる先入観を捨て、先方に敬意を払いつつ、同時に堂々と自分の主張を述べるように心がけるべきだということです。(93ページより)

交渉は決して難しいものではないと著者は断言しています。考え方を習得すれば、駆け引きが苦にならなくなり、自分のことばで相手を動かし、自分の目指す利益を実現できるようになるはずだとも。

本書を参考にしながら、そのためのスキルを身につけてみてはいかがでしょうか?

Source: 朝日新聞出版

メディアジーン lifehacker
2021年3月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • このエントリーをはてなブックマークに追加