スナック キズツキ 益田ミリ著

レビュー

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スナック キズツキ

『スナック キズツキ』

著者
益田ミリ [著]
出版社
マガジンハウス
ジャンル
芸術・生活/コミックス・劇画
ISBN
9784838731381
発売日
2021/01/28
価格
1,430円(税込)

書籍情報:openBD

スナック キズツキ 益田ミリ著

[レビュアー] 南沢奈央(女優)

 1日頑張ってくたくたになって、でも家にまっすぐ帰りたくない。そんなときに立ち寄りたい。都会の路地裏の、傷ついた者しかたどり着けないスナックキズツキ。

 益田ミリさん7年ぶりの描き下ろしで描かれるのは、傷を抱えた人たち。それが特別な傷ではないからこそ、共感できる。たとえばコールセンターで働くナカタさんは、客から高圧的に文句を言われ、付き合っている彼にも自分の話を聞いてもらえない。何事もないかのように振る舞える、むしろ傷とも思わないほどのもやもや。だけどスナックでソイラテを飲みながら、ママの勧めで歌に自分の思いを乗せてみると、本当は痛いんだ、と本音が溢(あふ)れる。傷を癒やすには、痛みを認める必要があると気づかされる。

 また、作中で誰かを傷つけてしまった人を決して放っておかない。高圧的な電話をしてしまったアダチさんの感じている窮屈さや、彼であるタキイの強がりなどを描くことによって、人は傷つき、誰かを傷つけて生きている、ということがじんわりと胸に染みる。人生の止まり木になってくれる一冊。(マガジンハウス、1300円)

読売新聞
2021年3月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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