<東北の本棚>九死に一生 今に生きる

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奇跡のパイロット―零戦無敵神話~三上一橲「自伝」より~

『奇跡のパイロット―零戦無敵神話~三上一橲「自伝」より~』

著者
知坂元 [著]
出版社
路上社
ISBN
9784899930877
発売日
2020/11/01
価格
1,100円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>九死に一生 今に生きる

[レビュアー] 河北新報

 100歳以上の高齢者は国内で8万人以上いるが、陸前高田市で暮らす103歳の三上一〓(1037)(かつよし)さんは唯一の経歴を持つ。旧日本海軍の零式艦上戦闘機(零戦=ゼロ戦)が初めて実戦に登場した1940年9月13日に中国・重慶上空で戦い、ただ1人今も生きる元戦闘機パイロットだ。
 本書は、三上さん自身が書いた自伝を、弘前市で郷土を題材にした漫画などの執筆活動をしている著者がまとめた。プロローグとエピローグをはさみ、「零戦無敵神話」「教育への情熱」「再会」「巨大津波」の4章。大半を「零戦無敵神話」が占める。
 中学卒業と同時に親の反対を押し切って海軍に入り、苦労を重ねながら一人前の戦闘機パイロットになった三上さん。中国での空中戦がリアルに描かれる。
 零戦の初実戦を無事に生き延びた三上さんは、戦後、教材販売の会社を起こし、92歳で現役の社長の時、東日本大震災で被災した。街も会社も津波で流されたが、高台の自宅で九死に一生を得た。
 著者は、三上さんのたくましい生きざまを、陸前高田市を襲った津波で7万本もの松の中で唯一残った「奇跡の一本松」に重ねる。
 挿絵をふんだんに盛り込み、簡潔な文章で表現。小学生らの副読本の体裁だ。(相)
   ◇
 路上社0172(36)8858=1100円。

河北新報
2021年3月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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