漢文で知る中国 加藤徹著

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漢文で知る中国

『漢文で知る中国』

著者
加藤 徹 [著]
出版社
NHK出版
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784140818503
発売日
2021/01/25
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

漢文で知る中国 加藤徹著

[レビュアー] 中島隆博(哲学者・東京大教授)

 中国の古今の名言を通じて、著者である加藤徹さんが人生を語るその語り方が実に温かい。たとえば、旧暦三月に咲くモモの花が散るのを、「三月的桃花――謝了」と言う。しかし、それは単に散ったことを表現しているだけでなく、「お先にごめんなさい。そして、ありがとう」という謝罪と感謝の思いも込められているという。「家に回(かえ)りて仏(ほとけ)に見(まみ)ゆ」も味わい深い言葉だ。仏教の真理を求めて旅をしていた人が、身近にいる仏陀(ぶっだ)に気づくという意味である。

 加藤さんは、「端午の節句に餃子(ギョーザ)を食べる」を地でいく個性的な学者である。中国文学だけでなく京劇への造詣も深い。しかし、この本を読んであらためて、「廬山(ろざん)の真面目(しんめんもく)を識(し)らず」つまり加藤さんの本質を十分には理解できていなかったことに思い至る。「人生は、無数の行為の積み重ねだ」として、その結果「いつかすべて落ち着くべきところに落ち着く」と励ますように言葉を重ねる加藤さんは、人間を超えた自然の摂理に目を向けようとしているのだ。「いい雪だ。ひとひらひとひら、それぞれ決まったところに落ちてゆく」。(NHK出版、1700円)

読売新聞
2021年3月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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