「顔」の進化 馬場悠男著

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「顔」の進化 あなたの顔はどこからきたのか

『「顔」の進化 あなたの顔はどこからきたのか』

著者
馬場 悠男 [著]
出版社
講談社
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784065222317
発売日
2021/01/21
価格
1,100円(税込)

書籍情報:openBD

「顔」の進化 馬場悠男著

[レビュアー] 梅内美華子(歌人)

 見る、聞く、噛(か)む、味わう、嗅ぐ、そして呼吸と顔にある器官はフル活動している。また自分の顔を鏡に映しては触れたり、他者の表情から感情を読み取ったりする動物は人間だけだ。顔に関して人間は忙しい。

 本書の副題は「あなたの顔はどこからきたのか」。哺乳類の顔で眼(め)、鼻、口、耳が一か所に集まっているのは、食物を取り込む口の周囲に感覚器が近づき「それらを統御する脳も発達」したからだという。そして咀嚼(そしゃく)を顎や顔面筋が支える。顔は外界と命をつなぐ最前線であるのだ。コロナ禍の今は顔の半分をマスクで覆うので眼でコンタクトを取ることが増えた。動物に白眼の部分がほとんど表れていないのは獲物を狙う視線を察せられないためだという。ではヒトの白眼の部分はどんな役割を持っているか。

 人類学者である著者が携わった初期猿人から江戸時代の女性まで、頭骨分析は壮大である。長い時間の中で確かなことは「たった一つしかないあなたの顔」。顔の歴史や支え合う器官を知ると著者が願う「自分を慈しむ」ことにたどりつけるだろう。(講談社ブルーバックス、1000円)

読売新聞
2021年3月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加