エイドリアン・セビル著「西洋アンティーク・ボードゲーム」

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エイドリアン・セビル著「西洋アンティーク・ボードゲーム」

[レビュアー] 尾崎真理子(早稲田大学教授/読売新聞調査研究本部客員研究員)

 サイコロを振ってゴールを競う「すごろく」は、洋の東西を問わず親しまれてきた机上の遊戯だ。ことに19世紀の西欧では、急展開する同時代を俯瞰(ふかん)する、新奇な図柄が次々に流行した。その黄金期の約90点をカラー写真で収める。

 基本のルールは、16世紀末のイタリアから広がった「がちょうのゲーム」に由来する。9の倍数のがちょうのマスでは幸運が、6の橋、19の宿屋、31の井戸、58の死(振り出しに戻る)などでは災厄が待っていて、63であがりが定番。

 イギリスでは道徳、フランスでは宗教教育の盤が多い一方、戦況報告、政治風刺のメディアにもなった。鉄道や汽船の発達につれ、名所巡りや世界一周、天体の図柄も増える。アメリカでは人生ゲーム的な成功物語が人気を呼んだ。なんと豊かな文化誌の世界。いくら眺めていても飽きない。鍋倉僚介訳。(日経ナショナルジオグラフィック社、2700円)

読売新聞
2021年3月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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