ラストで明かされる12の短編を貫く謎

レビュー

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ぼくのミステリな日常

『ぼくのミステリな日常』

著者
若竹七海 [著]
出版社
東京創元社
ISBN
9784488417017
発売日
1996/12/21
価格
880円(税込)

書籍情報:openBD

ラストで明かされる12の短編を貫く謎

[レビュアー] 北上次郎(文芸評論家)

 書評子4人がテーマに沿った名著を紹介

 今回のテーマは「桜」です

 ***

 若竹七海『ぼくのミステリな日常』は、なかなか凝った小説だ。従業員二千人の建設コンサルタント会社が社内報を出すことになり、総務部の女性が編集長に任命される。で、その社内報に載せる短編小説の作家を探し、大学時代の先輩に泣きついて、結局は匿名作家を紹介してもらうところから始まっていく。

 というわけで毎月、社内報に載った12の短編を私たちは読むことになる。自分が知らない間にどんどん止めどなく買い物をしているようなので、尾行してほしいという依頼から始まる話や、草野球の相手チームがこちらのサインを盗んでいるようなのだが、その方法がわからないから突き止めてほしいという依頼など、こう言ってよければ、日常の中の小さな話ばかりだが、その設定と構成が鮮やかなので、これだけでも十分に面白い。ところが、本書が素晴らしいのは、それだけではないことだ。

 この12の話を貫く大きな謎があるのだ。読みながら、何かヘンだなという違和感があったのだが、それがラストで見事に解かれる快感を見よ。しかししかし、本書はそれでもまだ終わらない。その真実のもう一つ底に、また別の謎が眠っているという三重構造になっているのだ。恐るべきデビュー作といっていい。

 桜は冒頭に出てくる。桜嫌いの人物が登場する短編で、これも重要な鍵の一つになっている。

 ところで最後の一編に出てくる芳野道子はどっちと結婚したんだろう?

新潮社 週刊新潮
2021年4月15日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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