この伏線がすごい大賞2021の大本命現る!? スマッシュヒット中の『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成氏インタビュー(後編)

インタビュー

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六人の嘘つきな大学生

『六人の嘘つきな大学生』

著者
浅倉 秋成 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041098790
発売日
2021/03/02
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

この伏線がすごい大賞2021の大本命現る!? スマッシュヒット中の『六人の噓つきな大学生』浅倉秋成氏インタビュー(後編)

[文] カドブン

3月2日に刊行された新作の長篇小説『六人の噓つきな大学生』がテレビで紹介され、話題沸騰中の浅倉秋成さん。後編の今回は、これまでの浅倉さんの創作活動について、そして「伏線の狙撃手」という異名の誕生秘話などを伺いました。

>>発売直後に続々重版! 話題沸騰中の『六人の噓つきな大学生』浅倉秋成氏インタビュー(前編)

――『六人の噓つきな大学生』は社会派ともいえますよね。ただ、これまでには、コミカルな作品も書かれています。毎回、作品のトーンはどのように決めているのですか。

浅倉:毎回、リアリティのレベルをどこに持っていくのかを考えます。僕はもともと、本を読んで物語にハマったのではなく、アニメが好きだったんです。深夜アニメは全部見ていました。シリアスなものもふざけたものもあって、それが大きかったと思います。

――あまり本は読んでいなかったのですか。デビュー作『ノワール・レヴナント』の時から文章がしっかりされている印象でしたが。

浅倉:デビューした時の文章は村上春樹さんの影響が強かったですね。あれはかなりの長篇ですが、そこからそぎ落としていくようにして、ちょっとずつ文章がうまくなっている手応えはありますが、まだまだです。

――村上春樹さんが好きなんですか。

浅倉:もともと読書家ではなかったんです。小学5年生の時に読書感想文の課題がでて、友達が「これどう?」って、図書室にあった『吾輩は猫である』を持ってきたんです。タイトルを見てまあなんと和やかそうな話だと思って借りてめくったら、1ぺージ目に「書生」という言葉が出てきてもう分からない。それで、僕は本が読めないんだ、と思いました。もしそれが『ツァラトゥストラはかく語りき』だったら読めなくても分かるけれど、『吾輩は猫である』が読めないなんて『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』が読めないのと同じじゃないか、って感覚でした。そこから読書アレルギーになっちゃったんです。

でも大学の授業で東野圭吾さん原作の映画『容疑者Xの献身』を観る機会があって。原作を読んで何にびっくりしたかっていうと、「俺、読める!」(笑)。そこから本を読む人間になって、東野圭吾さん、伊坂幸太郎さん、村上春樹さんの作品を読んでいきました。

――そこからすぐ、自分も小説家になりたいと思って書き始めたのですか。

浅倉:もともとは漫画家になりたくて絵を練習していたんですけれど、書きたいシリアスな話と自分の絵のふざけ具合が全然マッチしていなくて心折れました。

大学3年生の時に文芸創作の講義があり、短篇を書いて合評していたんです。そこで「あ、小説は書けるぞ」と気づき、ハマりました。3年生の時に1回講談社BOX新人賞“Powers”に応募して大撃沈して、4年生の時に書いた『ノワール・レヴナント』を社会人になってから投稿して受賞しました。

――なぜ応募先として講談社BOX新人賞“Powers”を選んだのですか。

浅倉:アニメが好きだったんですがライトノベルが書けるほどぶっ飛べないし、その頃は講談社タイガも新潮文庫nexもなくて、(一般文芸との)ボーダーラインにあるレーベルが講談社BOXだったんです。ここから出ていた『化物語』や『ひぐらしのなく頃に』のアニメも好きでしたし。

――『ノワール・レヴナント』は背中にその人の幸福度を表わす数字が見える能力を持った少年ら、不思議な能力を持った人たちの話ですね。第二作の『フラッガーの方程式』は、日常を深夜アニメのようなドラマティックなものに変えるシステムが出てくるし、『教室が、ひとりになるまで』は他人の噓を見抜く能力を持つ高校生らが学校の連続自殺の謎に迫る。特殊設定の作品が多いですね。

浅倉:アニメを見てきた人間からすると、特殊な設定を考えるほうが楽なんですよ。僕はミステリの読書量が足りていないので、小学生の時からホームズを読んできた人と真っ向から闘うために、特殊設定をかませることで強度を保とうとしているところはあります。

――『六人の噓つきな大学生』で、はじめて特殊設定を使わなかったわけですね。

浅倉:意外とあっさり書けたといえば書けたんです。ただ、超常現象は出てこないけれど、細かく設定していかないといけない、という部分は今回も同じでした。僕は特殊設定にしても、「この場合はこうじゃないのか」「あの場合はどうか」と神経質なくらい考えるところがあるので。

――社会人が主人公の『九度目の十八歳を迎えた君と』(創元推理文庫)も十八歳を繰り返している同級生と再会するなど、どの作品も、青春期の話であることは共通していますね。

浅倉:こだわりはないんですが、自分が通ってきた道なので、書きやすいといえば書きやすいです。ただ、他人になれるのが小説を書く喜びなので、今後は自分から遠い世代も書きたいです。

この伏線がすごい大賞2021の大本命現る!? スマッシュヒット中の『六人の...
この伏線がすごい大賞2021の大本命現る!? スマッシュヒット中の『六人の…

――『教室が、ひとりになるまで』が本格ミステリ大賞〈小説部門〉や日本推理作家協会賞〈長編および連作短編集部門〉の候補になるなど、ミステリ作家として注目が高まっていますが、ジャンルに対する意識は。

浅倉:ジャンルレスが好きで、分類できないけれど面白い本が書きたいという気持ちはあります。深夜アニメで、次にスタートする作品の予告を見て想像するのが好きだったんです。タイトルくらいしか情報がなくて、ジャンルも分からなくて。『涼宮ハルヒの憂鬱』や『Steins;GATE』の予告を見て「どんな内容だろう」とワクワクして、実際に見て「こんな話なの!」って驚いたりして。自分もそういうことがしたくて、デビュー作も『ノワール・レヴナント』という訳分かんないタイトルにしちゃったんですけれど。

ただ、今、せっかくミステリとして評価していただいたので、そこで地盤を固めていこうとは思っています。

――浅倉さんに「伏線の狙撃手」という異名がつけられたのはいつからですか。

浅倉:デビュー作で担当者が公式ホームページなどに「伏線の狙撃手、爆誕」って書いたんです。単純に、名前がダサいから嫌です(笑)。真剣に嫌がってもしょうがないので、その話をふられると「狙撃させていただいてます」などと返していますけれど(笑)。

――ツイッターのアカウント名が「浅倉秋成(の母)」ですよね。最初、お母さん、なんて絵がお上手なんだろうと思って……(笑)。

浅倉:しばらく本が出せずにいて、ようやく『教室が、ひとりになるまで』を刊行できることになった時、再デビューのつもりでできることは全部やろうとしたんです。これが駄目だったら作家を辞めるかもしれないし、それで一般企業で働くことになった時、「前は小説書いてました」「まあ、あれをやっていたら売れたと思うんですけれどね」といった言い訳を一個もしたくなかった。1冊でも売るために努力したいけれど、SNSで「どうもー浅倉ですー」とツイートしてもフォローしてもらえない。それに、面白いことは全部小説に使いたいから、日常生活の切り売りもしたくなくて。それでも何かしようと考えて「母」にしちゃったという。一応、母には小さく許可をもらっています。

――今後のご予定を教えてください。

浅倉:今月、『フラッガーの方程式』が文庫化されます。今年の夏か秋に『ノワール・レヴナント』も文庫化の予定です。新作は今プロットを練っている段階で、うまくいけば年内に出せるかと思います。

■作品紹介

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この伏線がすごい大賞2021の大本命現る!? スマッシュヒット中の『六人の…

■六人の嘘つきな大学生

著者 浅倉 秋成
定価: 1,760円(本体1,600円+税)

「犯人」が死んだ時、すべての動機が明かされる――新世代の青春ミステリ!
ここにいる六人全員、とんでもないクズだった。

成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を
得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。

『教室が、ひとりになるまで』でミステリ界の話題をさらった浅倉秋成が仕掛ける、究極の心理戦。

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322005000377/
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撮影:小林川ペイジ  取材・文:瀧井朝世 

KADOKAWA カドブン
2021年04月09日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

KADOKAWA

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