『勝者のゴールデンメンタル』
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豆腐メンタルを最強にするために重要な2つの「小さな習慣」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
人間は、「好き」なのか「嫌い」なのか、「やりたい」のか「やりたくない」のか、というような“感情”で行動を決めているもの。したがって、「やる気が出ない」「自分に自信が持てない」などの悩みも、感情のコントロールによって解決できる。
『勝者のゴールデンメンタル 「心が強くなる」35の習慣』(飯山晄朗 著、だいわ文庫)の著者は、このように主張しています。
スピードスケート選手の髙木菜那選手に代表されるアスリートから、経営者まで2万人以上を指導してきた実績を持つメンタルトレーナー。
メンタルトレーニングにかかわるようになったのは、10数年前にSBT(スーパーブレイントレーニング®︎)に出会ったことがきっかけだったといいます。
SBTとは、大脳生理学、心理学を用いて、無意識のうちにマイナスのイメージ、感情、思考になっている人間の脳をプラスにコントロールし、最大限に潜在能力を開発させるという画期的な脳力のトレーニング法です。
誰がやっても潜在意識を肯定的に変えることができ、能力を最大限発揮させることができるのが特徴です。(「はじめに」より)
通常のメンタルトレーニングの心理的な手法だけでは、内面まで変えることは困難。重要なのは、脳の領域まで踏み込み、日常から脳を最高の状態にして潜在能力を発揮させること。
すなわち、いま持っている能力をさらに引き上げようというのが、ブレイントレーニングな考え方なのだそうです。
そうした考え方に基づく本書は、おもにスポーツ分野を事例にしつつ、「どうすれば“豆腐のメンタル”から脱却して“ゴールデンメンタル”をつくれるか」を指南したもの。ビジネスパーソンにも応用できるメソッドが凝縮されているわけです。
きょうは第5章「成功をつかむゴールデン・メンタル習慣」のなかから、2つの「小さな習慣」をご紹介したいと思います。
寝る前3分間が結果を生む
夢や目標を実現しやすくするために大切なのは、実現したイメージを思い描くこと。それができるかどうかで、「実現できるかどうか」が決まるのだと著者はいいます。
実現イメージを何度も何度も繰り返し描いて、潜在意識に落とし込んでいきます。脳は現実なのかイメージなのかを区別できませんから、何度もイメージしていることは、経験したことと同じように記憶されていくものです。(127ページより)
たとえば、なにか解決したいことを四六時中考えているとか、どうしても成し遂げたいことについて、「どうしたら実現できるか」と寝ても覚めても考えているとか。そんなことをしているうちに、適切なアイデがパッとひらめくことがあります。
著者によれば 、それは寝ている間でも働いている潜在意識が、解決策や実現する方法を考えてくれているから。とくに、「こうなりたい」「あんなふうになっていたい」ということをイメージし、ことばにしていると、潜在意識は実現の方法を考えてくれるというのです。
なお、夢や目標を実現させるために重要なのは、「一日をどのような思い、感情で終わらせるか」なのだそうです。
寝る前に否定的な思いになる出来事があると、マイナスのイメージトレーニングをしていることになってしまいます。しかし寝る前に肯定的な思いをつくってしまえば、最後を記憶する脳は、それを肯定的なデータとして記憶してくれるということ。
脳は一日の最後を強く記憶します。
そして寝る前に思っていたこと、感じていたことを寝ている間に繰り返してくれるのです。
このことから、イメージトレーニングに最適なタイミングは“寝る前”だということがわかります。(129ページより)
布団に入ってから寝つくまでの時間にイメージトレーニングを行えば、最も効果的に潜在意識に記憶させることができるということ。つまり、そうした一日3分のイメージタイムをとることが大切であるようです。(126ページより)
否定的な思いは「これ」で打ち消せ
「夢を実現したい、豊かな人生を送りたいと思ってはいるものの、なかなかうまくいかないんだよね」などと思っている人は、うまくいかなくて当たり前。著者はそう指摘しています。
なぜなら「うまくいかない」と思っていることに問題があり、つまりは日ごろから思っていることが実現されているだけだから。
夢に対する感情はどうなっているか。
目標に対する感情はどうなっているか。
人生に対する感情はどうなっているか。
これらの感情が否定的なのか肯定的なのか、これが成否を分けるポイントです。
実は、感情が否定的になっている人は無意識に「どうせ…」「でも…」「だって…」という言葉をよく使います。そして、言葉と一緒に、ため息をつく、眉間にシワを寄せるといった動作・表情をつくってしまいます。
何度も繰り返すうちに定着してしまい、ため息をつくだけで脳は否定的な反応をするようになります。
だからこのようなマイナスの動作や表情がしないほうがいいのです。(131〜132ページより)
とはいえ、無意識にやってしまう動作には仕方がない部分があるのも事実。そこで、マイナスの動作や表情をしたあとに、それを打ち消す動作をしてみるべきだといいます。
効果的なのは、「ナシ」といって手で目の前を払い除ける仕草なのだとか。
例えば、「どうせ無理だ」と思ったら(口にしたら)「ナシ」と言って手で目の前を払いのける。
「だってできないから」と思ったら(口にしたら)「ナシ」と言って手で目の前を払いのける。
そうして、いま集中すべきことに集中するという行動をとります。「ハァ〜」とため息をついてしまったら、その後で笑顔で「今のナシ」といって顔の前で何かを払うような動作をします。(133ページより)
マイナスな動作や表情をしてしまったら、すぐに“消去”すればいいようです。
100回マイナス思考になったら、101回プラス思考にすればいい。脳は“後”を記憶するので、とにかく最後はプラスで締めくくることを習慣にするべきだという考え方です。(130ページより)
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紹介されているのは、一流経営者から五輪メダリストまでのあらゆる人々に著者が伝えてきた“メンタル強化メソッド”。最初から順に読み進める必要はなく、どこからでも読めるような構成になっていることもあり、応用範囲は広そうです。
Source: だいわ文庫