弱い男 野村克也著

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弱い男

『弱い男』

著者
野村 克也 [著]
出版社
星海社
ジャンル
歴史・地理/伝記
ISBN
9784065222249
発売日
2021/01/27
価格
1,100円(税込)

書籍情報:openBD

弱い男 野村克也著

[レビュアー] 読売新聞

 球界の知将・野村克也が亡くなって1年が経(た)とうとしたころ、その「最期の言葉」が本にまとめられた。

 平成生まれの若い編集者は、強い男である著者に「男の弱さ」を語らせようと、亡くなる1月前までインタビューを重ねる。だが、野村克也から出てきたのは、「私は常に弱かった」という言葉だった。

 極貧家庭に育った幼少期も、いじめに悩んだ小学生時代も、プロに入り注目される選手となった全盛期も、監督として名声を博した指導者時代も、「私はいつも弱かった」のだ、と。

 そして、最愛の沙知代夫人にも先立たれた。老いによって欲も消え、「人生の余りのような、オマケのような時間」をただ無為に過ごしているのだと男は言う。「寂しさを紛らわすものがないんだ」。どこまでも酷薄な語りが続く。

 時代と年齢。人間はこのふたつに抗(あらが)うことができないのだと野村克也は語る。そこから目を逸(そ)らさず、弱さととことん向き合った男の語りがここにある。ラストの一行を読むと、やがて訪れる最期のときに自分は何を思うだろうかと、しばらく考え込んでしまう。(星海社新書、1100円)

読売新聞
2021年4月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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