竹葉丈編著 「『写真の都』物語」

レビュー

4
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「写真の都」物語

『「写真の都」物語』

著者
竹葉丈 [著、編集]
出版社
国書刊行会
ジャンル
芸術・生活/写真・工芸
ISBN
9784336071989
発売日
2021/02/12
価格
4,180円(税込)

書籍情報:openBD

竹葉丈編著 「『写真の都』物語」

[レビュアー] 木内昇(作家)

 大正期から戦後、安保闘争頃までの、名古屋における写真の歴史をひもといた一書。「写真の都」の題名通り、かの地で多様な潮流が生まれ、一時代を築いてきたことに驚かされる。

 ゴム印画技法を用いた神秘的な作品で注目された日高長太郎が、愛友写真倶楽部を創設し、才能豊かな写真家が集う。やがて写真の美学を表現する新興写真が隆盛し、静物を独特の視点で切り取った前衛写真も登場する。戦後、土門拳が「非演出のスナップによる人生描写」を提唱すると、東松照明などによるリアリズムを志向した作品が生まれる。これはすなわち、写真家たちの写真への模索と挑戦の記録なのだ。

 本書所収の作品は、今なお斬新で秀逸だ。そして、写真表現の奥深さや可能性を強く感じさせるものだ。写真家がなにかを捉え、シャッターを切る。そこに生ずる僅(わず)かな時差に、人生や背景が入り込む。優れた写真には、そんな不思議な奥行きが宿っている。(国書刊行会、4180円)

読売新聞
2021年4月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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