メモは取らない。無駄を省いて結果を出すトヨタ流「30分会議術」

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

メモは取らない。無駄を省いて結果を出すトヨタ流「30分会議術」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

複雑性が増し、予測不可能な現代に求められているのは、「ギガ速で成果を出すためのコミュ力(コミュニケーション能力)」。

トヨタの会議は30分 ~GAFAMやBATHにも負けない最速・骨太のビジネスコミュニケーション術~』(山本大平 著、すばる舎)の著者は、こう断言しています。

新卒でトヨタ自動車に入社して新型車の開発業務に携わり、TBSテレビに転職してからは人気テレビ番組の制作、プロモーション、マーケティングに関与。そののちアクセンチュアでのマネージャー経験などを経て、2018年に独立したという戦略コンサルタント/事業プロデューサー。

あまり類を見ない異業種間転職をしているわけですが、なかでも最初に経験したトヨタ自動車が大きな意味を持っていたのだとか。なぜなら、「とにかく無駄を嫌う」トヨタの文化が自分にフィットしていたから。

トヨタ自動車は、超大企業なのにPDCAを高速で回し(他社比較)、質実剛健を旨とする社風の会社でした。

トヨタの文化を代表する「KAIZEN」という言葉が示すように、業務上のちょっとした無駄でも、常に全力でなくしていく姿勢がありました。

当たり前のことを継続的に、突き詰めて行う文化があったのです。

無駄な会議や生産性の低い打ち合わせをすると、上司に叱責されるような会社です。(「はじめに」より)

そこで本書では、著者自身がトヨタで受けた教育のなかで「これはもっと世に広めるべきだ」と思った考え方やノウハウを明かしているわけです。

きょうは第1章「極限まで減らす『時短会議術』」のなかから、「『会議ではメモなし』が暗黙知」に注目してみたいと思います。

会話に集中することで、より早く、より深く理解できる

会議や打ち合わせの席でメモをとることはある意味で“常識”であり、メモをとっていないと「真剣に聞いていない」と怒られるようなことも少なくないはず。

しかし現実的に、そのメモをあとから見返す事はほとんどないのではないか? 著者はそう指摘しています。

ビジネスの場ではメモをとることが当たり前になっているので、あまり違和感を抱かないのですが、本来、人と人とのコミュニケーションという観点では、会話中に熱心にメモをとること自体が不自然な行為なんです。

相手が目の前にいるのに、その相手の顔を見ずに手もとのメモを見ながら、何かを書き込みながら話を聞くーーこれは相手の話に興味がない印象を持たせ、下手をすると相手を怒らせることさえある行動なのだと認識しましょう。(68ページより)

それよりも話し手の顔をしっかりと見て、表情や身振り手振りなどのノンバーバルな情報をも取り入れながら、自分の脳に相手の話を深く刻みつけたほうがコミュニケーションにズレが生じず、理解の深さや速度の向上するはずだということ。

事実、そのような理由から、トヨタで著者が在籍していた部署では、基本的に「会議や打ち合わせ中はメモなし」が暗黙のルールになっていたのだそうです。(67ページより)

議題に興味があるなら、メモをとらなくても忘れない

ことばさえわかれば、メモがなくても問題なし。基本的に、話したり聞いたりした内容は脳に記憶されているからです。

興味がないことはどんどん忘れていくことになるでしょうが、それは誰しも同じなのではないでしょうか?

よって、あまり興味がわかないけれども覚えておかなければならない内容なら、会議や打ち合わせが終わったあとに、要点や数字などだけメモすればいいのです。リアルタイムでは相手の話に集中するようにしましょう。(70ページより)

相手の話に興味があり、しかも自分の仕事やプライベートに必要な情報であるなら、メモをとらなくても脳にインプットされていくもの。だからこそ脳をフル回転させ、相手の話をしっかり聞くことを重視すべきだということです。

もちろん、多数の数字が会話のなかで提示されるなど、どうしても覚えにくいときにはリアルタイムでメモをとる必要があるかもしれません。

しかし、そうした数字に関しては多くの場合、あらかじめ資料が用意されているケースがほとんど。そう考えると、やはりリアルタイムでのメモの必要性はさほどないことになります。(69ページより)

最初は不安でも、慣れればメモなしでも問題なくなる

会議や打ち合わせの最中にメモをとる余裕があるのなら、むしろ話し手に対してさらなる情報を求めるようにするのもいいそう。相手が教えてくれた情報に対し、その場でさらに「なぜ?」を何度か繰り返し、とことん相手の真意を探るということ。

そうすれば、より深いところまで情報や知見が得られるからです。しかも自分自身がことばを発しているのですから、その際のコミュニケーションの内容はメモをとる場合よりも数段深く脳にインプットされることになります。

したがって、メモ帳は記憶した内容を整理するための「思考ノート」として使うこと意識すべきだと著者は主張しているのです。

メモをとる習慣がついている場合、それをやめることには不安が伴うかもしれません。でも、少し時間が経てば「どうしてメモをとることにこだわっていたのか」と思えるはずだそうです。

ちなみに、同じ理由で会議や打ち合わせの最中にカタカタカタとノートパソコンで記録をとる行為も、トヨタでは見かけませんでした(少なくとも私の周辺では)。

情報漏洩対策でパソコンの移動や持ち込みが制限されているという事情もありますし、メモをとるのさえダメなのですから、会話中にノートパソコンなどで記録をとっていたら上司や同僚に何を言われるかわからない、という事情もあります。(73ページより)

会議中にノートパソコンを叩く光景はよく見られますが、絶対にやめたほうがいいと著者はいいます。なぜなら、なんとなく作業をしている気になるだけで、たいした意味はないから。

それよりも相手の目や顔を見て話をよく聞き、自分の脳に情報をしっかり記録することを意識すべきだという考え方です。(71ページより)

会議術のみならず、他にもコミュニケーション術や人間関係構築法など、さまざまな角度からトヨタならではのメソッドが明かされていす。

決して難解な内容ではなく、応用しやすいものばかりなので、ぜひとも参考にしたいところです。

Source: すばる舎

メディアジーン lifehacker
2021年4月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク