絵本出版賞で大賞に輝いた『Dalia Good Night』すず村さおりさんの世界

インタビュー

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Dalia Good Night

『Dalia Good Night』

著者
すず村, さおり, 1991-
出版社
星雲社 (発売)
ISBN
9784434284878
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

第5回絵本出版賞大賞受賞!『Dalia Good Night』すず村さおりさんを取材しました

[文] みらいパブリッシング

絵本出版賞で大賞に輝いた『Dalia Good Night』すず村さおりさんの世界

絵本のコンテスト「絵本出版賞」にて大賞を受賞した、すず村さおりさんの『Dalia Good Night』。

受賞に至るまでの経緯や、作品についての思いなどを聞きました。


すず村さおりさん。後ろにいるのは絵本の主人公ダリア

――絵本出版賞に応募しようと思ったきっかけは?

10年前、通っていた大学の授業で「仕掛け絵本」を作る課題があり、『 Dalia Good Night 』はそのときに生まれたものです。成績がどうだったかは覚えていませんが、私と母がこの絵本を気に入っていて、ダリアのイラストをちょこちょこ描いたりしていました。すると、昨年の春、母から突然、絵本出版賞のURLが送られてきて、なんとなく「応募してみようかな」と思い、投稿しました。

昔のハードディスクを引っ張り出して、コンビニのコピー機で印刷して。苦手な定規とカッターで格闘して、お昼に郵便局に持っていきました。

――受賞の知らせを聞いたときは、どのような気持ちでしたか?

受賞の通知を受け取ったときは、誰かに認めてもらえたんだと、純粋に嬉しい気持ちでした。


作画の様子

――なぜ夢をモチーフにしようと思ったのでしょうか?

ストーリーのモチーフである「夢」について私自身、物心ついたときから「眠ったときにみる夢」がとても好きでした。眠っている間に勝手に見ささる(注:北海道弁でつい見てしまうという意味)し、内容も選べず、誰とも共有できない、しかも二度と同じ夢は見られないなんて映画よりアトラクションより面白いと思います。

でも、誰も見た夢の話なんてしない。大人になったら特にしない、夢の話なんて意味ある? という感じが寂しいんです。例えば夢で誰かが亡くなったり、故人が出てきたりすると、普段は気にしていない人でも何となく気にかけたりすると思うのです。その後連絡してみたり。

それなので、夢に少しスポットを当ててみると、現実を生きるヒントになるかもしれないと感じます。

――『Dalia Good Night』のこだわりについて教えてください。

かわいいもの、ビビッドな色合いが好きで、気のおもむくままに制作しました。

また応募時は「扉が開く仕掛け」がありましたが、「仕掛け以外に工夫できないか?」というお話をいただき、扉の次ページに、扉を開けたときに見える光景の見開き絵を足しました。絵の視点が同じにならないようになど気をつけましたね。

ほかにも「仕掛け」を入れたかったので、主観的に感じてもらえるよう文章表現に五感を入れたり、読むだけでなく、遊べるよう見返しに間違い探しを作ったりしました。最終ページに「間違い探しがあるよ」とアナウンスを入れることで、最後まで読んでもらったあとに、もう一度最初のページに戻ってもらえるようにしたのも工夫の一つです。これには、「次は(読んでいる)あなたが眠って 夢の扉を開ける番」というメッセージを込めています(そのため、間違い探しの見返しにはあえて文字を入れていません)。

また、この絵本には細かいストーリーの描写がありません。その意図ですが、ダリアの物語をたどるだけでなく、読む方に想像して欲しくて、わざと省いています。でも「想像して」とか「こう読んでね」とは絶対に書きたくなくて……。今言ってしまっている時点で成立しませんが、絵や文章や仕掛けから、感じてもらえるように作りたかったです。これが、特にこだわったところです。


ページをめくるたびに夢の不思議な世界を体験できます

――出版後、変化や気づきなどありましたか?

まず、本屋さんに自分が描いたものが置いてあることに、何とも言えない嬉しさがありました。不思議な感覚でした。何より私の家族がとても喜んでいて、それが嬉しかったです。

「おばけのページが好きで、じっと見ている」

「うちの子が、一生懸命間違い探しをしているけど、1個だけ見つけられない」

「宇宙のページで、惑星を瓶(びん)に詰めるって、面白い」

など、お子さんの写真つきで、応援のメッセージも色々たくさんいただきました。

また私自身、テレビ番組制作の仕事をしていることもあり、いつも担当している番組で絵本を特集してもらって、たくさんの方々にご覧いただきました。大人から「なんか響いた」と言っていただけたこともあり、素直に嬉しかったです。これからも頑張ろう、と思いました。


10年前にうまれたダリアの世界が、ついに1冊の本に

この絵本を出版するにあたって、編集者の方とやりとりをしながら、3~4ヶ月ほどかけて絵の修正や文章の練り直しなどをしました。文章表現について、客観的な意見をもらえて、とても助かりました。凝り固まってしまがちなので……。本の作り方の知識が全くなかったので、ご面倒もかけたかと思いますが、印刷前の最終稿をいただいたとき、突然実感が湧いて とても嬉しかったのを覚えています。

――最後に読者の方にメッセージをお願いします。

これまで、絵本という媒体に特にこだわってはいませんでしたが、今回「絵本」に向き合って、昔を思い出したり、新しい絵本を読んだりして、あらためて「絵本」って素敵だと感じました。ぜひ皆さんも、夢の扉を開けていくダリアの気持ちで、本作を読んでみてください。そして、この絵本の続きである“皆さんの夢”を、ぜひ私にも教えてもらえると嬉しいです!

三村真佑美

みらいパブリッシング
2021年4月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

みらいパブリッシング

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