舞台は平安時代末期の京都 現代的趣向が光る歴史ミステリー

レビュー

3
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蝶として死す

『蝶として死す』

著者
羽生 飛鳥 [著]
出版社
東京創元社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784488020125
発売日
2021/04/12
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

舞台は平安時代末期の京都 現代的趣向が光る歴史ミステリー

[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)

 歴史ミステリーは歴史小説とミステリー双方の実力が試される。新人にはちょっとハードルが高いジャンルだが、本書はそれを見事にクリアしてのけた、第一五回ミステリーズ!新人賞受賞作「屍実盛(かばねさねもり)」他全五篇から成る連作ものだ。

 平清盛率いる平家一門が栄華を誇る平安時代末期の京都。平頼盛(よりもり)は、だが、異母兄の清盛と折り合いが悪く、疎まれ解官の憂き目にあっていた。冒頭の「禿髪(かぶろ)殺し」はそんな折、清盛が取り締まりのため都中に放った少年たち――禿髪のひとりが死体で発見され、頼盛が手柄欲しさに捜査に乗り出すところから始まる。

 頼盛は幼少時から埋葬地で屍や骨を調べて遊び、のちにはお抱え医師からも学んで医術の基本を心得ていた。下手人は何故禿髪の遺体を放置したのか。頼盛は清盛に会って改めて下手人探索を買って出る。翌日、頼盛は現場で禿髪といるのを目撃された老女から事情を聞く。女は怪しい男が殺したと主張するが、頼盛はその話に矛盾があるのを見抜く。

 話はそこからさらに二転三転、事件には思いも寄らない真相が隠されていた。というわけで、表向きは平頼盛が平家と源氏の熾烈な覇権争いの中を生き抜いていく姿が軸になるのだが、続く「葵前(あおいの まえ)哀れ」では高倉天皇の庇護下にある寵姫がどのように毒を盛られたのか、多重解釈が繰り広げられ、「屍実盛」では平家軍を破って都入りした木曽義仲に呼び出された頼盛が五つの首なし死体から伝説の武将の遺体の特定を命じられるなど、ミステリー趣向はすこぶる尖っている、というか、現代的。

 清盛亡き後、頼盛は源頼朝の傘下に入り、そこでも再三ピンチに陥るが、卓抜した推理力で難を逃れ、家系の存続に貢献。最初はちょっとずる賢いヤツだと思われるかもしれないが、読み終える頃には頼盛という男が好きになっているのでは。著者は児童文学でも活躍中とのことで、現代ものミステリーにも期待したい。

新潮社 週刊新潮
2021年4月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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