ハリウッドスターも本性を現す20代美女の桁違いなポーカーゲーム

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モリーズ・ゲーム

『モリーズ・ゲーム』

著者
モリー・ブルーム [著]/越智 睦 [訳]
出版社
ハーパーコリンズ・ジャパン
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784596550866
発売日
2018/05/10
価格
1,038円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

ハリウッドスターも本性を現す20代美女の桁違いなポーカーゲーム

[レビュアー] 吉川美代子(アナウンサー・京都産業大学客員教授)

 3年前に公開された映画『モリーズ・ゲーム』とほぼ同時に翻訳出版された原作。作者モリー・ブルームは2013年にFBIに逮捕された。罪状は、巨額賭け金のポーカーを主催して違法に利益を得ていたこと。日本では全く話題にならなかったが、アメリカのメディアは彼女を「ポーカー・プリンセス」と呼んでセンセーショナルに報じた。ポーカーをやったことがないモリーが、プライベートなポーカーゲームの手伝いをしたことがきっかけで、一晩に億単位の金が動くポーカーの主催者になるまでわずか数年。そのエキサイティングな日々と逮捕起訴までが詳細に綴られた回顧録は臨場感に溢れている。

 アメリカでは州の法律でも連邦法でも、お金をかけるポーカー自体は違法ではなく、参加者から手数料を取ることが違法。最高級ホテルのスイートルームで行われるゲームの参加者は、国民的スポーツ選手、ハリウッドの人気スター、監督、大物実業家、大富豪。彼らを出迎えるのはプレイボーイ誌のゴージャスなモデルたち。主催者モリーは一流ブランドのドレスに身を包んだ20代の美女。参加者のプライドをくすぐる演出に、勝者も敗者も彼女に桁違いの高額チップをはずむ。手数料など取らなくても運転手付きのリッチな生活を楽しめた。だが、大金の匂いをマフィアが嗅ぎつける。歯車は狂い始めて……。

 全財産を差し押さえられたモリーは裁判で争うことを断念して起訴内容を認め、判決が出される直前に本書を出版。映画撮影開始はその2年後なので、どんな判決かは映画を観ればわかる。モリー役はジェシカ・チャステイン。原作のワクワクドキドキハラハラがテンポよく映像化され、しかも後味のいい作品になった。

 映画では別名だが、原作の登場人物はすべて実名。ハリウッドスターの本性も垣間見える。中でもトビー・マグワイアの性格の悪さは相当なもの。金に汚くて陰湿、人に恥をかかせ、破滅させて喜ぶ。彼の出演作もう観ません! レオナルド・ディカプリオとベン・アフレックは、勝敗よりもゲームのスリルに夢中になるタイプで気前のいい朗らかな紳士。何故か安心(笑)。

新潮社 週刊新潮
2021年4月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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