<東北の本棚>身近な海藻の生態追う

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

わかめ

『わかめ』

著者
青木 優和 [著]/畑中 富美子 [イラスト]/田中 次郎 [監修]
出版社
仮説社
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784773503050
発売日
2020/12/18
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>身近な海藻の生態追う

[レビュアー] 河北新報

 三陸沿岸で盛んに養殖され、私たちの食卓に欠かせないワカメ。身近な海藻の生態が絵本になった。東北大大学院農学研究科の青木優和(まさかず)准教授(海洋生態学)が文を担当し、誕生と成長、収穫の過程を丁寧に追う。
 ワカメの根元にあるメカブが遊走子(胞子)を放出し、繁殖する様子を緻密な絵とともに紹介。植物なのに、遊走子は泳ぐ。多くは巻き貝のコシダカガンガラに食べられ、生き残れば受精して、ぐんぐん育つ。ダイナミックな構図が目を引き、小さな冒険譚(たん)のようだ。
 日本人がワカメを食した歴史をたどり、養殖についても説明する。海の幸を産業として生かし、豊かな食文化を築いた人々の知恵を描いた。多角的な視点でワカメを深く知ることができる。
 本文の前後に掲載した付録も楽しい。9ページにわたり、料理レシピや観察法、外国の海に与える影響といった情報がぎっしりと書き込まれ、著者の「海藻愛」があふれ出ている。
 ワカメって美味だけど地味。そんな印象が読後にがらりと変わった。
 海洋生物の不思議を紹介する「海のナンジャコリャーズ」シリーズの第2弾。第1弾は小型甲殻類のワレカラを取り上げた。(和)
   ◇
 仮説社03(6902)2121=1980円。

河北新報
2021年4月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク