<東北の本棚>身近な海藻の生態追う
[レビュアー] 河北新報
三陸沿岸で盛んに養殖され、私たちの食卓に欠かせないワカメ。身近な海藻の生態が絵本になった。東北大大学院農学研究科の青木優和(まさかず)准教授(海洋生態学)が文を担当し、誕生と成長、収穫の過程を丁寧に追う。
ワカメの根元にあるメカブが遊走子(胞子)を放出し、繁殖する様子を緻密な絵とともに紹介。植物なのに、遊走子は泳ぐ。多くは巻き貝のコシダカガンガラに食べられ、生き残れば受精して、ぐんぐん育つ。ダイナミックな構図が目を引き、小さな冒険譚(たん)のようだ。
日本人がワカメを食した歴史をたどり、養殖についても説明する。海の幸を産業として生かし、豊かな食文化を築いた人々の知恵を描いた。多角的な視点でワカメを深く知ることができる。
本文の前後に掲載した付録も楽しい。9ページにわたり、料理レシピや観察法、外国の海に与える影響といった情報がぎっしりと書き込まれ、著者の「海藻愛」があふれ出ている。
ワカメって美味だけど地味。そんな印象が読後にがらりと変わった。
海洋生物の不思議を紹介する「海のナンジャコリャーズ」シリーズの第2弾。第1弾は小型甲殻類のワレカラを取り上げた。(和)
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仮説社03(6902)2121=1980円。