人生100年時代の年金制度 日本年金学会編 法律文化社

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人生100年時代の年金制度

『人生100年時代の年金制度』

著者
日本年金学会 [編集]/権丈 善一 [著]/西村 淳 [著]/藤森 克彦 [著]/坂本 純一 [著]/吉中 季子 [著]/玉木 伸介 [著]/阿部 公一 [著]/石田 成則 [著]/菅谷 和宏 [著]/谷内 陽一 [著]/上田 憲一郎 [著]/村上 正人 [著]/原 佳奈子 [著]
出版社
法律文化社
ジャンル
社会科学/法律
ISBN
9784589041203
発売日
2021/01/20
価格
4,290円(税込)

書籍情報:openBD

人生100年時代の年金制度 日本年金学会編 法律文化社

[レビュアー] 稲野和利(ふるさと財団理事長)

 本書は日本年金学会の創立40周年を記念した論文集である。13人の識者が公的年金から私的年金まで、制度改革の歴史、年金財政、積立金運用、年金教育、税制、将来生活設計などのテーマに沿って幅広い領域をカバーする。年金制度の将来を展望するためには、現行制度の理論的理解と歴史的理解が不可欠だが、本書はその点を満たした上で今後の課題を整理する。人生100年時代にあって、個人の豊かで幸せな生活を経済面から下支えする年金制度への関心はいやが上にも高まる中、一般読者にとっても実務家にとっても本書は有用である。

 年金制度には経済社会環境の変化が影響を与える以上、その道筋は平坦(へいたん)な一直線とはならない。1961年の国民皆年金発足時に急速な少子高齢化は見通せていなかったし、66年の厚生年金基金発足時には5・5%以上のリターンの実現可能性に誰も疑いを持つことなく、その後の超低金利環境も全くの予測外であった。結果、制度は軋(きし)む。しかし、公私両年金制度における制度改革は、その時々で幾つかの論点を残しながらも巧みに環境変化に対応してきたといえる。公的年金における年金財政を理由とした支給開始年齢の引き上げの必要性がなくなった点など、読めばよく理解できる。

 保険料負担なく受給資格を得るなど実質的に専業主婦を制度上優遇する点が論点の「第3号被保険者問題」は、単純な婚姻関係(家族モデル)が前提とならないことが意識される時代になって浮上してきた。このように、制度の論点も経済社会環境の変化と密接に関係している。

 本書は、就労を支援する年金制度設計を目指すのが今後の方向だと論ずる。この点、現在の大きな課題はパート・アルバイト等短時間労働者への厚生年金保険の適用拡大であり、特に就職氷河期世代の高齢期貧困予防を視野に入れる必要がある。「いわば、厚生年金保険の適用拡大は『より高い付加価値を生み出すビジネスモデルへの転換』を求め、『生産性革命』を促している」という本文中の言葉を企業は至言と受け止めるべきであろう。

読売新聞
2021年4月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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