日本占領下のレイテ島 荒哲著

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日本占領下のレイテ島

『日本占領下のレイテ島』

著者
荒 哲 [著]
出版社
東京大学出版会
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784130261685
発売日
2021/02/04
価格
10,340円(税込)

書籍情報:openBD

日本占領下のレイテ島 荒哲著

[レビュアー] 加藤聖文(歴史学者・国文学研究資料館准教授)

 太平洋戦争で最大の激戦地はフィリピンだ。日本軍の戦没者は50万人を超え、他の戦地を圧倒する。そのなかで、日米の勝敗を決定づけたのはレイテ島の攻防戦。その戦闘の激しさは、戦記文学の金字塔である大岡昇平の『レイテ戦記』を読んだ人なら覚えているだろう。

 しかし、日米決戦の舞台となったレイテ島は無人島でない。当たり前のことだがそこには現地の人びとの生活と社会があった。彼らは戦前のアメリカの植民地支配から日本軍の占領、そしてレイテでの激戦を経て戦後の独立という激動の歴史に翻弄(ほんろう)された。

 著者は、戦争に巻き込まれた現地の人びとの世界に飛び込み、彼らにとって日本軍による占領の歴史的意味に迫る。長い地道な研究の成果である本書は、抗日・親日で単純に割り切れないフィリピン社会の縮図と現代に続く「病理」の深淵(しんえん)を描き出すことに成功している。

 戦争に巻き込まれたフィリピン人の犠牲者は110万人を超える。日米に翻弄され、正史ですくいきれなかった彼らの苦悩、そして日本とは無関係ではないフィリピンの現代史をわれわれは直視しなければならない。(東京大学出版会、1万340円)

読売新聞
2021年4月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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