言葉にできない想いは本当にあるのか いしわたり淳治著

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言葉にできない想いは本当にあるのか

『言葉にできない想いは本当にあるのか』

著者
いしわたり 淳治 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784480815606
発売日
2020/12/14
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

言葉にできない想いは本当にあるのか いしわたり淳治著

[レビュアー] 木内昇(作家)

 名言、名句のたぐいより、ぽろりとこぼれた本音や珍妙な言い回しなど、日常でふと耳にした言葉が、意外と胸に響いたりする。作詞家、音楽プロデューサーとして活躍する著者が、TVや広告、本の言葉に反応し、共感したり蒙(もう)を啓(ひら)かれたり、時に疑問を呈したりしつつ持論を展開するのだが、これが実に味わい深い。

 結婚願望について聞かれたタレント指原莉乃の返答「日によります」を、「ある」とも「ない」とも明言せず、かつ、それ以上追及させない見事な切り返しだと感心する。また、マツコ・デラックスが、語尾を伸ばす女性に言った「(語尾が)長い分だけねぇ、幸せが逃げていくのよぉ~」に納得し、その理由を説く。とりわけ楽曲のフレーズへの解釈は深く、短い言葉で世界を綴(つづ)る、作詞家ゆえの視点の妙を感じさせる。

 昨今のTVは「消毒」したためにつまらなくなった、との意見への想(おも)いも興味深い。その状態も世の中を映しているから面白いとする一方で、正義という名の消毒液を「心の潤い」で希釈するのが大事だとする一節にはうなった。今の世に必要な理知かもしれない。(筑摩書房、1540円)

読売新聞
2021年4月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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