著者はベストセラー「怖い絵」で知られるドイツ文学者。初のエッセー集が文庫オリジナルで登場した。主に新聞や雑誌に寄稿した随筆を集め、加筆修正したものという。
西洋史や芸術に関する広範な知識を基に、美術鑑賞に新たな視点を提示した名手だけに、絵画にまつわる文章が多い。解説にとどまらず、名画との衝撃的な出会いなど、実体験や自身の嗜好(しこう)も織り交ぜて書かれているので、親近感がわく。
身辺雑記的なものや書評も収録。「時に歴史書よりも勉強になる」と、著者一押しのエンタメ小説を紹介。造詣の深さに驚く。(中野京子著、文春文庫・957円)
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2021年4月25日 掲載
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