感情の哲学入門講義 源河亨著

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感情の哲学入門講義

『感情の哲学入門講義』

著者
源河 亨 [著]
出版社
慶應義塾大学出版会
ジャンル
哲学・宗教・心理学/哲学
ISBN
9784766427196
発売日
2021/01/23
価格
2,200円(税込)

書籍情報:openBD

感情の哲学入門講義 源河亨著

[レビュアー] 瀧澤弘和(経済学者・中央大教授)

 近年様々な分野で感情研究が盛んになっているが、その波は哲学にも押し寄せているようだ。本書はその現状をわかりやすく、また面白く伝えてくれる入門書である。

 近代哲学は長いこと、認識論中心で、人間の理性を重視し、感情をそれより劣ったものとしがちだった。しかし、感情を理解することなしに、人間や社会を理解することなど不可能なのだから、感情の哲学の勃興は大歓迎である。

 全体は15回の講義仕立て。最初に、感情が決して思考と無縁のものではなく、状況を捉える思考的な側面が重要であることが明らかにされる。感情は価値判断の思考的側面と、それを踏まえて状況への対処を準備する身体的な側面の二面性を持つのだ。

 文化を超えた基本的感情が存在するが、それを混合した複雑な感情も存在し、文化がそれに影響しているのも興味深い。後半では、ロボットも感情を持てるかなどの問題が扱われる。

 現在の感情の哲学の展開が、心の科学と深く関わり、様々な実験結果を参照していることも印象的だ。

 哲学的思考法の丁寧な説明も随所にちりばめられ、初心者の哲学入門としても有用である。(慶応義塾大学出版会、2200円)

読売新聞
2021年4月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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