【聞きたい。】木俣正剛さん 『文春の流儀』 世の人から信頼されるために

インタビュー

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文春の流儀

『文春の流儀』

著者
木俣 正剛 [著]
出版社
中央公論新社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784120054105
発売日
2021/03/09
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

【聞きたい。】木俣正剛さん 『文春の流儀』 世の人から信頼されるために

[文] 磨井慎吾


木俣正剛さん

 オーナー企業が当たり前の出版界にあって、文芸春秋は社員持ち株制でサラリーマン社長が選ばれる仕組みや人事異動の激しさなど独特の社風で知られる。

 その文春で風雪40年。「週刊文春」「文芸春秋」など看板雑誌の編集長を歴任し、3年前の社長交代をめぐるお家騒動ではワンマンぶりで知られた当時の社長に諌言(かんげん)して刺し違える形で勇退した元常務が、芥川・直木賞選考の舞台裏から松本清張ら昭和の大作家の意外な逸話、果ては“文春砲”のもみ消し実例という際どい裏話まで、ざっくばらんに明かした回想録だ。

 「自分に一番合う会社にうまく入れて、自由に仕事ができ、上司やニュースソース、作家にも恵まれた。悔いはないですね」

 現在は地方の女子大で教鞭(きょうべん)をとるが、気になるのが若い世代をはじめとした市井の人々の多くが文春にいい印象を持っていない点だという。いまや文春といえば、もっぱら芸能や政治のスキャンダルを狙う“文春砲”の会社というイメージだが、「週刊文春」単体では赤字といい、スキャンダリズムに頼った現行路線には危うさも感じている。

 「現状、文春が拍手されているのは、“必殺仕置人”みたいなものだと思われているから。しかし未来への展望を出せているわけではないので、時代が変わると不要なものとして捨てられてしまうのではないか」

 その危惧は1990年代初頭、総合週刊誌トップに躍進しておごりが生じた「週刊文春」のデスク時代に当時皇后だった美智子さまへのバッシング記事などが社会の反発を浴びた苦い経験に由来している。「そのためには『文芸春秋』本誌がもっと元気でないと。“文春砲”的文春と、常識と教養ある人に向けた本誌的文春の2つを備えて初めてバランスが取れ、世の人からも本当の意味で信頼されるのだと思います」(中央公論新社・1980円)

 磨井慎吾

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【プロフィル】木俣正剛

 きまた・せいごう 昭和30年、京都市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、53年に文芸春秋入社。「週刊文春」「文芸春秋」編集長などを経て平成27年に常務取締役。30年退社。現在、岐阜女子大副学長。

産経新聞
2021年5月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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