【聞きたい。】吉田亮人さん 『しゃにむに写真家』 「いばらの道」赤裸々に

インタビュー

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しゃにむに写真家

『しゃにむに写真家』

著者
吉田 亮人 [著]
出版社
亜紀書房
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784750516868
発売日
2021/02/17
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

【聞きたい。】吉田亮人さん 『しゃにむに写真家』 「いばらの道」赤裸々に

[文] 平沢裕子

 著者は「働く人」や「生と死」をテーマに撮影し、国内外で注目されている写真家。本書は、小学校教員だった著者が、30歳でゼロからスタートして写真家となるまでの10年間を振り返った奮闘記だ。

 「若い人や人生の岐路に立っている人にぜひ読んでほしい。専門的に写真を学んだことがないぼくでも写真家になれた。こんなでたらめな人間でも踏み出せば何とかなったということを知ってもらえれば」

 写真家を目指したのは、同じく教員をしている妻からの「今の仕事をこのまま続けるつもり?」の一言がきっかけだ。子供が生まれたばかりのころで、「家に公務員は2人いらん」と言い放つ妻に驚いたが納得する部分もあったという。

 「子供は親の姿を見て育つ。これからの時代を生きる子供に、いろんな生き方があることを示すことは必要だと思った」

 そこから始まった「いばらの道」が赤裸々につづられる。失敗に終わった難民キャンプ取材。インドを自転車で旅した2カ月間とその後の怠惰な生活、妻からの叱責…。挫折を繰り返し、出会った人に支えられながら、写真家の道を自らの手で切り開いていく。

 中でも心揺さぶられるのが著者の祖母といとこのエピソードだ。大のおばあちゃん子で、成人してからも祖母と同じ部屋で暮らしていたいとこ。著者は2人の写真を撮り続けていたが、ある日いとこが遺体で発見される。自死だった。

 いとこは何のために生まれ、生き、死んだのか。深い悲しみに沈む祖母。著者自身も打ちのめされながら2人の写真と向き合い、写真集を作ることで乗り越えていく。この写真集は国内外で反響を呼び、現在はドイツで展示会が開催中だ。

 これから最も撮りたいのは、かつての職場でもあった学校という。

 「学校、家族、働く現場。自分の中で興味関心のあることがいっぱいあって、形になるまで追いついていない」。うれしい悲鳴を上げた。(亜紀書房・1760円)

 平沢裕子

   ◇

【プロフィル】吉田亮人

 よしだ・あきひと 昭和55年、宮崎県生まれ。滋賀大教育学部障害児教育学科卒。写真集に「Brick Yard」「The Absence of Two」など。写真賞受賞多数。

産経新聞
2021年5月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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