『星落ちて、なお』澤田瞳子著
[レビュアー] 産経新聞社
幕末から明治中期に活躍した人気絵師・河鍋暁斎(きょうさい)の娘、とよの一代記。暁斎は花鳥画から風刺画まで多彩な画業を残した。戦後は忘れられていたが、近年は再評価が進んでいる。
本作は女絵師・とよが父を亡くした場面から始まる。河鍋一門の行く末がとよの双肩にかかるが、絵で結ばれていた家族のバランスは崩れ、暁斎の画風を受け継ぐ腹違いの兄とのきょうだい相克も。
欧化と揺り戻しを経て日本画壇が変化し、暁斎が過去の画家となる中、とよは時代とどう向き合うのか。日清戦争や関東大震災も背景として書き込まれ、読み応えがある。(文芸春秋・1925円)