【児童書】『見知らぬ友』マルセロ・ビルマヘール著、宇野和美訳、オーガフミヒロ絵

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見知らぬ友

『見知らぬ友』

著者
マルセロ・ビルマヘール [著]/宇野和美 [訳]/オーガフミヒロ [イラスト]
出版社
株式会社 福音館書店
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784834084689
発売日
2021/02/12
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【児童書】『見知らぬ友』マルセロ・ビルマヘール著、宇野和美訳、オーガフミヒロ絵

[レビュアー] 蔭山実(産経新聞編集長)

 ■最後に想定外の「真実」

 さえない“僕”をめぐる10編の小さな物語。数々の児童文学賞を受賞しているアルゼンチンの実力派作家がティーンエージャーの抱える不安や悩み、人生に対する希望や夢をテーマにつづった。軽やかなストーリーの中に隠された人生のほろ苦さとささやかな喜び。どの話もウイットとペーソスに富み、読後に味わい深い余韻が感じられる。

 いずれもフィクションだが、自らの少年時代の体験が下地にあるようだ。表題作となった一編は、ピンチになると現れて救ってくれる「見知らぬ友」が登場する物語。算数のテストで満点を取らせてくれたり、好きな女の子に思いを通じさせてくれたり、全てがうまく運ぶ。大人になってからも仕事や家庭は順調だったが、最後に思いもしない“真実”が待っていた。

 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの街中が主な舞台。南半球の異国情緒と作者が子供のころを過ごした約40年前の世相をくみ取りながら読み進めれば、より深みもでてくる。これからを生きる青少年への珠玉の短編集だ。(福音館書店・1870円)

 蔭山実

産経新聞
2021年5月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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