日本外食全史 阿古真理著 亜紀書房

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日本外食全史

『日本外食全史』

著者
阿古 真理 [著]
出版社
亜紀書房
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784750516837
発売日
2021/03/10
価格
3,080円(税込)

書籍情報:openBD

日本外食全史 阿古真理著 亜紀書房

[レビュアー] 稲野和利(ふるさと財団理事長)

 本書は、多数の参考書籍に加え、映画・漫画・TV・雑誌といった様々な経路から外食を紐解(ひもと)き、近現代を中心に江戸時代以降の外食の歴史を網羅する。食べることへの興味や執着を梃子(てこ)にうつ病を克服した経験もある著者の観察眼は鋭く、壮大なテーマを見事にさばく。外食に関して随分恵まれた境遇にある今日を意識しながら、「コロナ後まで視野に入れた、外食の苦難と葛藤と達成の物語」を楽しもう。

 外食の歴史では、大災害や国家的イベントなどを契機に不連続線上で変化が起きてきたことがよく分かる。関東大震災で被災した東京では、手っ取り早くできる屋台や露店で、安価に提供できるモツの店が盛況となり、モツ煮込みが広まる。天ぷらやラーメンは震災を契機に職人が全国に散らばって広まったのだと言う。イベントでは東京五輪と大阪万博だ。オリンピックは冷凍食品の導入など技術革新に貢献すると同時に、全国から集まった料理人が当時の徒弟制度下ではあり得なかったレシピ共有を果たしたことが外食の発展に寄与する。国民の延べ半数が訪れた万博は、「国民的外食デビュー体験」であった。サンドイッチ、ホットドッグ、インドカレーなどを初めて味わった人も多かった。

 1950年代にアメリカが西側諸国に大量の小麦粉を安く提供した政策はパンの朝食やラーメンやギョーザの普及につながり、外食産業の多様化に結びつく。また、60年代の資本自由化を受け外国資本ルーツの外食チェーン店が広がるなど、食糧政策や経済政策も外食の歴史に影響を与えてきた。

 本書には数々の著名料理人が登場しその人生も描かれ外食の歴史に彩りを添えるが、歴史の主役は庶民だ。コロナ禍で苦難の状況にある外食だが、本書を読み「日本は庶民が食を支える国」であることを理解すると、今後不連続線上の変化が続々生まれることを期待する気持ちになった。

読売新聞
2021年5月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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