人は簡単には騙されない ヒューゴ・メルシエ著

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人は簡単には騙されない

『人は簡単には騙されない』

著者
ヒューゴ・メルシエ [著]/高橋洋 [訳]
出版社
青土社
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784791773640
発売日
2021/02/25
価格
3,080円(税込)

書籍情報:openBD

人は簡単には騙されない ヒューゴ・メルシエ著

[レビュアー] 小川さやか(文化人類学者・立命館大教授)

 虚偽広告に引っかかる人々やフェイクニュースで溢(あふ)れるSNSを見れば、人間が騙(だま)されやすいという証拠には事欠かないようにみえる。本書はそうした人間の騙されやすさに関する古今東西の事例に次々と反論し、「人は簡単には騙されない」ことを認知科学と進化生物学の視座から論じる。

 人類は、進化の過程で「開かれた警戒メカニズム」を発展させた。生き残るために人間は強い警戒心を育み、デマを信じるよりも、むしろ既存の信念や自己利益にそぐわない情報を信じないようになった。同時に人間は、雑多なコミュニケーションに対して開かれた姿勢をもつよう進化してきた。信じがたいデマを流す人々が実際に行動に移すことが稀(まれ)であるように、デマが拡散するのは自身にさほど関係がないからである。逆に言えば、自身に直結する情報に関しては、人は意外に騙されないのだ。

 ではなぜ「大衆は騙されやすい」という誤った信念がかくも広く流布しているのか。それには自身の行動や考えを正当化したい統治者や知識人らの別の動機があると。社会の分断を叫ぶ人にこそ読んで欲しい。高橋洋訳。(青土社、3080円)

読売新聞
2021年5月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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