起業には強い意思、そして「道徳」「国語」「算数」が重要である

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起業は意志が10割

『起業は意志が10割』

著者
守屋, 実, 1969-
出版社
講談社
ISBN
9784065212233
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

起業には強い意思、そして「道徳」「国語」「算数」が重要である

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

起業は意志が10割』(守屋 実 著、講談社)は、起業や新規事業創出に対するさまざまな不安や疑問に答え、実際に新たな事業を生み出そうとしている人をサポートするために書かれたのだそうです。

コロナ禍により多くの物事が激変するなか、起業という手段を選ぶことにはリスクが伴うようにも思えます。

しかし、まったく予測ができない社会になったいまだからこそ、「起業」について書きたいと強く思ったというのです。

既成の価値観が覆る今こそ、「新たな事業の力」が必要となる。

突然生まれた新たな生活様式の中で、不便を感じていたり悩みを抱えていたりする人は多い。

事業は顧客がいてこそ成立する。

新たなニーズを持った顧客がこれまでの歴史の中では見られないほどにたくさん生まれた今は、歴史上見られないほどにたくさんの新たな事業が求められている時期でもあるのだ。(「はじめに」より)

前著『新しい一歩を踏み出そう!』(守屋 実 著、ダイヤモンド社)もご紹介しましたが、著者は社会人になってから一貫して新規事業に携わり続けてきたという「新規事業創出のプロ」。

そして、設立間もないスタートアップへの多くの参画機会を得てきた「起業のプロ」でもあります。

つまりはそうした実績が、本書のバックグラウンドとなっているわけです。

なお著者はここで、起業には「道徳」「国語」「算数」が重要だと主張しています。

いったいどういうことなのでしょうか? その点を明らかにするべく、第2章「起業の必修3教科 新道徳・新国語・新算数」を確認してみたいと思います。

起業で重要なのは「道徳」「国語」「算数」

著者によれば、起業で大切な教科は道徳、国語、算数。

その大切さ、順番も、道徳>国語>算数となるのだそうです。定義は次のとおり。

道徳は、心根の話。人としてのそもそも論

国語は、意思疎通。仲間としてのそもそも論

算数は、数字感覚。思考と行動と数字の一気通貫 (100ページより)

それぞれを確認してみましょう。(100ページより)

道徳は、意志や信念、ミッション

まず道徳は、本人の意志や信念、ミッションなどを指すそう。「この事業で社会の課題をどう解決したいと考えているのか」について、他人事ではなく、自分ごとにして「強く成し遂げたい」と思っていることが重要。

ブレない心がなければ、起業は始まらないということです。

起業は予想できないことやうまくいかないことの連続だ。それなのに「これだ!」という信念も持てていない領域に突っ込んでいっても、絶対にうまくはいかない。

「あれもよさそう」「これも儲かりそう」とフラフラした気持ちでいるようでは、苦境を突破できず、人もついてこない。

つまり、自分が何を主戦場にするのか、「これを貫き通す」という経営者としての道徳がなければ起業で成功することは難しいのだ。(101ページより)

新たなことに挑戦する以上は、「挑戦者としてなにがなんでも成し遂げたい」という強い意志、使命感、熱量を持ってそれらを乗り越えなくてはならないのです。(101ページより)

国語は、自分の意思を伝えるための「言語力」

国語は、自分の意志を伝えるコミュニケーション能力や事業の詳細を説明する言語力のことである。自分の頭の中を他者にアウトプットする力だともいえる。

なぜこの力が必要なのか。それは、自分だけでできることは多くないからだ。

自らの志を仲間たちや取引先に伝えて、賛同を得ることで、事業を拡大していくことができる。

消費者にも同様だ。メッセージをきちんと伝えられなければ、自社の商品・サービスを選んでもらうことはできない。(102ページより)

どれだけ熱い意志を持っていたとしても、ただ思っているだけでは他者には伝わりません。

したがって、自分がなにを目指し、どんな課題を解決したいのかをきちんと語り、あるいは発信するための国語力は欠かせないということです。しかも、それが浸透するまで何度も何度も伝える根気も必要。

スタートアップであれ大企業であれ、組織の問題は、いつの時代もなくなることのないノックアウトポイントだと著者。だからこそ、国語力をおろそかにできるはずもないわけです。(102ページより)

算数は、起業家に必要な「数字」感覚

最後の算数とは、企業家が持っているべき数字感覚。つまりはお金に対する感覚で、事業である限りは儲かるように仕組み化しなければならないということです。

人は、会社に存在しているだけでお金を食っているもの(給料、オフィスの家賃、電気代など)。雇われているときには気づきにくいことでしょうが、自分で事業を始めてみると、お金の問題は避けて通れないと思い知ることになるわけです。

しかもお金という数字に対する感度が鈍いと、「儲かる」と思っていた事業が最終的には赤字になったりすることも考えられます。

同じように、時間(=スピード)という数字も大切。必要なのは、隙間時間や細切れの時間、「ながら時間」をいかに活かすかを考えること。

また、自分ですべきことなのか、人にお願いしたほうがよいことなのかを見極めることも欠かせないわけです。(103ページより)

こうした理由があるからこそ、なにを思って行動し(道徳)、どう表明し(国語)、それがどのような数字(算数)になって現れてくるかという一連の流れは、起業するうえで欠かせないということです。

新型コロナの大きな衝撃波を乗り越えるには、信念を持って課題解決に挑む人が欠かせないと著者はいいます。

そうした人こそが、混沌のなかで未来を切り拓くというのです。そうした信念を持つ人を後押ししたいという著者のメッセージは、困難な時代を生き抜くための指標としても機能してくれそうです。

Source: 講談社

メディアジーン lifehacker
2021年5月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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