豊里友行著「沖縄戦の戦争遺品」

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沖縄戦の戦争遺品

『沖縄戦の戦争遺品』

著者
豊里友行 [著]
出版社
新日本出版社
ISBN
9784406065610
発売日
2021/04/10
価格
2,640円(税込)

書籍情報:openBD

豊里友行著「沖縄戦の戦争遺品」

[レビュアー] 加藤聖文(歴史学者・国文学研究資料館准教授)

 来月23日は沖縄の慰霊の日。沖縄戦から76年も経(た)っているが、今でも県内のあちらこちらに戦争の傷跡が生々しく残っている。

 20万人以上の犠牲者を生んだ沖縄戦で母・祖母・兄弟を亡くした国吉勇が「何かに駆り立てられるように」始めた遺骨収集は、2016年2月まで60年余にわたってほぼ毎日続けられた。

 国の支援もなく、苛酷(かこく)な自然環境の下、ジャングルに分け入って集めつづけた遺骨は、約3800人分。それに付随して集まった10万点を超す膨大な遺品のために戦争資料館を自費で開設。無口な国吉の行動は、遺骨収集も資料館の運営も民間まかせという現実を私たちに突きつける。

 身近に戦争体験者がいなくなり、戦争の悲惨さを想像するのが年々難しくなる今「戦没者一人ひとりの生きてきた証(あかし)や痕跡を浮かび上がらせる」これら物言わぬ遺品の迫力は、歳月を経るごとに増している。(新日本出版社、2640円) 

読売新聞
2021年5月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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