大奥といえば、江戸城にあった愛憎渦巻く女の園。あまたの女人がただ一人の将軍の寵愛(ちょうあい)をめぐって争いを繰り広げる-。かと思いきや、本作は11代将軍・徳川家斉の大奥を舞台にした、お仕事小説である。
家斉は50人以上の子供をもうけ、大奥の最盛期ともいわれるが、登場人物は文書係や衣装係などの働く女性たちだ。
短編6話を収録。各話のヒロインは身分も職種も多様で、出世競争もあれば“寿退社”もある。現代の会社勤めになぞらえて読むと、ヒロインたちの悩みや楽しみが身近に感じられて興味深い。(永井紗耶子著、新潮文庫・693円)
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2021年5月30日 掲載
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