フレドリック・ブラウンSF短編全集1~4 フレドリック・ブラウン著 東京創元社

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書籍情報:openBD

フレドリック・ブラウンSF短編全集1~4 フレドリック・ブラウン著 東京創元社

[レビュアー] 稲野和利(ふるさと財団理事長)

 1963年に発足した創元SF文庫の第1弾は、フレドリック・ブラウンの短編集『未来世界から来た男』。まだ10代前半だった評者が初めて買った文庫本がまさに同書であった。以来、評者にとってはSFと名のつく本を渉猟する時期がしばらく続くことになる。

 1906年生まれのブラウンはSF、ミステリー両分野における広範な活躍で知られるが、取り分け短編の名手としての評価が高い。本書はブラウンの全SF短編111作を年代順に集成したものであり、本邦初訳も含み新訳に改められ、日本語タイトルも一部変更されている。

 4巻を通読してみて、作品の魅力が全く色褪(あ)せていないことに驚いた、というよりは安堵(あんど)した。やはり偉大な作家である。ブラウンの作品には良質な短編小説にとって不可欠な要素である、奇抜な着想と驚きの結末、それを支えるプロットの確かさがあり、その意味でいつの時代も変わらぬ普遍性がある。一方、収録の作品群は1940年代から60年代前半に執筆されているが、当時の米ソ冷戦下の緊張や核戦争への恐怖は大きなテーマであったし、人類がまだ月へも到達していない段階であるがゆえに火星人や金星人が盛んに登場したり、あるいはブラウン自身の職歴が反映されたり、今読むと時代性が感じられる。時代性と普遍性がともに感じられる代表作として、米ソ冷戦下での出生率異変が予期せぬ展開を呼ぶ『地獄のハネムーン』(3巻)、人類の生き残りをかけて宇宙生命体との1対1の決闘に挑む『闘技場』(2巻)を挙げておこう。加えて自身が自動鋳造植字機(ライノタイプ)の操作員であった前歴が創作に反映された『天使ミミズ』(1巻)も代表作であろう。

 どこから読んでも良いし、一気読みもよし、一日1編読むのも楽しい。あらゆる読み方にたえうる珠玉の作品集だ。安原和見訳。

読売新聞
2021年5月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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