女ふたり、暮らしています。 キム・ハナ、ファン・ソヌ著 CCCメディアハウス

レビュー

4
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女ふたり、暮らしています。

『女ふたり、暮らしています。』

著者
キム・ハナ [著]/ファン・ソヌ [著]/清水知佐子 [訳]
出版社
CCCメディアハウス
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784484211039
発売日
2021/03/01
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

女ふたり、暮らしています。 キム・ハナ、ファン・ソヌ著 CCCメディアハウス

[レビュアー] 南沢奈央(女優)

 私はほぼ毎晩、お酒を飲む。最近は好きなお店にも行けないし、友達とも会えない。家でひとり、美味(おい)しいのか楽しいのかわからないまま、ぼうっと晩酌をする。だから、一番好きな飲み友達が家にいて、「最高の行きつけのバーはわが家のリビング」と言うふたりがすごく羨(うらや)ましい。しかもひとりは料理上手、ひとりは片づけ上手と来た。なんと素晴らしい関係。

 気の合う友達同士が生涯のパートナーとして生きていく。本書は、女ふたり飼い猫4匹(大家族!)の生活を綴(つづ)ったエッセイだ。ひとりでも結婚でもない、別の形の生活を模索していた元コピーライターのハナと元ファッションエディターのソヌが、40歳を目前にして、一緒にローンを組んでマンションを買って暮らす。

 本棚にふたりの本を並べたら同じ本がたくさんあったというくらいに好みも合い、生い立ちまでも似た者同士のふたりだが、実際に生活を共にしてみると対照的な部分がたくさんあるから面白い。「相似点が人を互いに引きつけ合い、相違点が互いの間を埋めてくれる」とはなるほど。衝突しながらも違いを尊重し合える関係性こそ、対人関係において目指したいところだ。

 ふたり一緒の老後を思い描いているというのも素敵だ。海辺で好きな音楽を流してカクテルバーをやる。そんな話を、好きな音楽を順番に流して好きなお酒を飲みながら、笑い合っている日々はなんて豊かなのだろう。漠然とした不安や孤独なんて無縁の、そういった未来の計画が、一緒に思い描ける存在が、心に平和を与えてくれるのだと思う。

 固定観念に縛られずに自分たちなりの生き方を進むふたりの姿を見ていると、思考が解放されてくる。こんな暮らし方をしてみたい。こんな人間関係を築きたい。新しい生き方や家族の形の可能性を広げられて、忙しい毎日で忘れがちな楽しく暮らすヒントも教えてくれる、人生の指針になる一冊。清水知佐子訳。

読売新聞
2021年5月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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