<東北の本棚>重罪犯した心理に迫る

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不可逆少年

『不可逆少年』

著者
五十嵐 律人 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784065221730
発売日
2021/01/27
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>重罪犯した心理に迫る

[レビュアー] 河北新報

 想像を絶するような凄惨(せいさん)な事件で罪を犯した少年たちの心理に迫り、手口を解き明かす青春リーガルミステリー。
 主人公瀬良真昼は、少年が逮捕された背景や原因を調べ、改善策を考える若手家庭裁判所調査官。「どんな少年も見捨てない」。強い信念の下、うそをつかれたり反抗されたりしながらも少年の置かれた状況を深く分析し、本音を引き出していく。
 ある時、ラブホテルの一室で、弁護士、ピアニスト、教師が殺された。インターネットに流れた犯行動画に映っていたのは、13歳の女子中学生。「みんなが恋人を作ってドキドキしたいって思うように、私も人を殺してドキドキしたい」。少女は3人を次々殺害し、高校生の姉も毒殺しかける。
 少女が送致された家裁に偶然、異動したことで真昼は事件に関わる。主任調査官は真昼に、脳の構造的な特徴や神経作用が非行を引き起こす可能性を示唆する。教育的手段では更正できない「不可逆少年」。「少年はやり直せる」と信じてきた真昼は戸惑いつつ、自分なりの向き合い方を見つけていく。
 物語はもう一人の主人公、雨田茉莉の周辺で起こる出来事と並行して進む。殺された弁護士である父から虐待を受けてきた茉莉は、大人が信じられず、少女を神とあがめる。同じように親を殺された幼なじみの兄弟とともに、複雑化していく事件に巻き込まれながらも、真昼たちと出会うことで新しい気持ちが芽生える。
 著者は盛岡市出身、東北大法学部卒の弁護士。350ページの大作だが、緻密な構成と論理展開、リズミカルな表現に引き込まれ、一気読みは必至だ。「青葉大学」「定禅寺高校」「七夕祭り」と仙台を連想させる舞台設定に、市民なら思わずニヤリとするに違いない。(江)
   ◇
 講談社03(3945)1111=1760円。

河北新報
2021年6月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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