フランス現代思想をベースに現代社会に切り込み続ける著者が、芸術について論じた小論を編集したものだ。取り上げられるのは三島由紀夫、村上春樹、宮崎駿、小津安二郎、大瀧詠一など。
たとえば宮崎駿の全作品を貫く魅力を著者は「少女が空を飛ぶから」と言って論じ始める。ややトリッキーなところもあるが、それも魅力的。読み終えれば論じられた作品を体験したくなる。
それぞれの芸術家とその作品に一家言を持つ者もきっと「そんな見方もできるのか」と感じるはずだ。著者にしか書きえないユニークなチェチェローネ(案内)だ。(青幻舎・1870円)
-
2021年6月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです