舞台は北海道。「おもちさん」が愛称の83歳の女性が主人公。独り暮らしをしているが、東京にいる娘は日に2回電話をくれ、近所には頼りになる息子のお嫁さんがいる。何より、同世代の友達との交流は楽しい。
だけど、最近物忘れが増えてきた。持病が悪化して入院することに。退院して家に帰れると信じているが、なんだか雲行きが怪しい。家族が決断した、おもちさんの新たな生活とは―。
不安やさみしさ、腹立たしさ。誰もがいつか感じる心情をやさしく物語に溶け込ませる。ユーモアも光る、人生最晩年を描いた小説。(光文社・1760円)
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2021年6月13日 掲載
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