政治の貧しさを笑いのめす豊かさ

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ジョークで読む世界ウラ事情

『ジョークで読む世界ウラ事情』

著者
名越 健郎 [著]
出版社
日経BP 日本経済新聞出版本部
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784532264611
発売日
2021/05/11
価格
990円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

政治の貧しさを笑いのめす豊かさ

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

▼補佐官が首相に提案した。「総理、支持率を確実に90%まで引き上げる方法を見つけました」「何だ、それは」「五輪を断行し、変異種に感染して、辞任を発表することです」

▼皇室典範の改正では天皇の条件から「男系の男子」が削られた。日本国憲法の改正では首相の条件に「総理大臣を2度以上、退任していること」が加わった。

▼神が天使に言った。「日本という国をつくろう。惨めで湿った貧相な島に、政治の貧困を我慢し、自分たちの国が最高だと錯覚する人々を住まわせよう」「それでは日本人が気の毒です」「大丈夫。周りの国にも同じような人々を置くから」

 ――というのは、時事通信の各国特派員として名を馳せた名越健郎の新著『ジョークで読む世界ウラ事情』に満載された政治笑話のごく一部……をワタシが勝手に改変してデッチあげた、ウヨクもサヨクも怒らせる駄ジョーク。いま腹を立てたアナタはこの新書をぜひ読んだ方がいい。ちゃんと腹を抱えられる傑作がいくつも載ってますから。

 ただ、同じ著者が2008年に出した『ジョークで読む国際政治』(新潮新書)のときより、お薦めできる相手は減ったかな。他国を笑い自国も笑う豊かさ、鷹揚さのある人があのころより確実に減って、増すのは低レベルな息苦しさばかりだもの。なにしろ……

▼「旧ソ連と日本との違いは何か?」「ソ連は悲劇だったがアネクドートがあった。日本は喜劇なのに芸人さえ政治ネタから逃げている」

新潮社 週刊新潮
2021年6月24日早苗月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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