【聞きたい。】布施努さん 『桐蔭学園ラグビー部 勝利のミーティング』 話すことが行動に結びつく

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【聞きたい。】布施努さん 『桐蔭学園ラグビー部 勝利のミーティング』 話すことが行動に結びつく

[文] 蔭山実(産経新聞編集長)


布施努さん

全国高校ラグビー大会で連覇を達成した桐蔭学園(神奈川)の強さの要因はミーティングの質にある。スポーツ心理学者としてチームを指導してきた成果を監督とともにつづった。

「選手や部下を自主的に動かし、主体的に仕事をさせるのに何を教えるのかと聞かれるが、何かを教えるのではない。行動をとる場、話し合う場をデザインしている」。目の前で起きていることにどの理論を当てはめるか。キュレーションと呼ばれる能力を米国で磨き、日本で応用した。

チームの問題解決へ「仮説」「実行」「検証」を繰り返す。なぜ失敗したのか。自分の言葉で明確に話すことで問題が可視化される。チームには主将といった役割があるが、役割を客観的な視点で演じる「役割性格」という手法を理解すると話しやすくなる。

大きな目標の一方で、達成できそうな小さな目標をつくる「ダブルゴール」という手法も取り上げる。試合中の目標がそうだが、これによって、自分の状況を把握する能力が身につく。

これらの実践を通じて、タイプの違うリーダーが育成され、組織は強くなる。それは五輪代表チームも同様だ。陸上の幅跳びのファウルと100メートル走のフライング。競技は違っても同じ不安を抱えている。「互いに思いもよらない考え方に気づき、その人のとる行動が見えてくる。言葉にできることが行動に結びつく」。それが記録の好調さにも表れているという。

指導の原点は「文化の違い」を埋めることだった。「外国ではミーティングでコーチに具体的な説明や練習に対する見方を普通に尋ねる。日本では指導者が戦術を提示する。試合でどう実現するかを話し合わないと意味がないのだが、その文化が日本にはあまりない」。教育やビジネスの場にも通じる課題である。(大和書房・1870円)

蔭山実

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【プロフィル】布施努

ふせ・つとむ 昭和38年、東京都生まれ。スポーツ心理学博士。慶大文学部卒。商社を経て米ノースカロライナ大クイーンズボロ校で博士号取得。帰国後、スポーツから企業組織まで幅広くパフォーマンスを向上させる指導をしている。

産経新聞
2021年6月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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