小説の読み方に正解はない。ただ、深く、自由に味わうためにはコツが必要なのも事実。第一線の英文学者が、19世紀の英女性作家ジョージ・エリオットの代表作『ミドルマーチ』を主な題材に、豊かな読解に役立つ視点を提示している。
例えば「象徴性」。地方社会の人間模様を描く『ミドルマーチ』には刺繍(ししゅう)や絡みつく髪といった織物のイメージが頻出し、人間を縛る因果律の象徴とも読める。技法面の分析のほか宗教や経済に照らした読み方も紹介。小説を楽しむための鉱脈は意外なところに眠っていると気づかされる。(廣野由美子著、中公新書・990円)
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2021年6月20日 掲載
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