アクセサリーの考古学 倭と古代朝鮮の交渉史 高田貫太著 

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アクセサリーの考古学

『アクセサリーの考古学』

著者
高田 貫太 [著]
出版社
吉川弘文館
ジャンル
歴史・地理/歴史総記
ISBN
9784642059220
発売日
2021/04/19
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

アクセサリーの考古学 倭と古代朝鮮の交渉史 高田貫太著 

[レビュアー] 譽田亜紀子(土偶女子で文筆家)

◆統治者の思惑を超えた煌めき

 わたしはアクセサリーが大好きだ。肌身離さず着けているお守りのようなネックレスをし忘れると、下着をつけ忘れたぐらい、落ち着かない。同様に、古墳時代の統治者たちもさまざまな理由で、こぞってアクセサリーを身につけたという。

 本書は五、六世紀、日本が倭と呼ばれた古墳時代に流通した、光り輝く貴金属のアクセサリーを通して同時期の朝鮮半島(新羅(しらぎ)、百済(くだら)、加耶(かや)、そして栄山江(ヨンサンガン)流域など)との交流を描いている。

 先進技術や情報を武器に、朝鮮半島の国々は海を隔てた倭との関係を巧みに利用し、隣国交渉を有利に進めていた。

 支配や連携のために国々はアクセサリーを贈り合う。政治色がまとわりついて輝きが鈍るんじゃないかと心配になるが、登場する各種アクセサリーは、贈り合う人の思惑を超えて、どこまでも煌(きら)びやかで美しい。できることならカラーで見たかったが、当時の金工細工技術の粋を集めた品々に、統治者たちが魅了されるのも無理はない逸品揃(ぞろ)い。

 中でも新羅から倭へ派遣され、交渉を有利に展開する役目を担ったという奈良県新沢(にいざわ)千塚一二六号墳に埋葬された人物のアクセサリーは圧巻だ。金銀製の耳飾り、髪飾り、首飾り、指環(ゆびわ)の他に冠や帯金具(バックル)まで身につけていた。新羅では王族や貴族のような地位にいた人物で、渡来系集団の統率者の可能性もあるという。アクセサリーは出身地である新羅製作、もしくは高句麗のものだというが、被葬者にとっては出自や後ろ盾を象徴する以上に、心の拠(よ)り所になっていたのではないだろうか。異国の地で重責に押し潰(つぶ)されそうな時、アクセサリーにそっと触れることで、故郷との繋(つな)がりを感じて再び職務に邁進(まいしん)できる。そんなことがあったかもしれないと想像すると、煌びやかなアクセサリーの色が違う色に見えてくる。

 人との距離感が世界中で見直される今だからこそ、アクセサリーは今も昔も贈り合う人々の心を繋げるのだと、古墳時代の東アジアを通して知ることができる一冊である。

(吉川弘文館・1980円)

1975年生まれ。国立歴史民俗博物館と総合研究大学院大の教授。『古墳時代の日朝関係』。

◆もう1冊 

広瀬和雄著『知識ゼロからの古墳入門』(幻冬舎)。素朴な疑問に答える。

中日新聞 東京新聞
2021年6月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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