『女ふたり、暮らしています。』
- 著者
- キム, ハナ, 1976- /ファン, ソヌ, 1977- /清水, 知佐子
- 出版社
- CCCメディアハウス
- ISBN
- 9784484211039
- 価格
- 1,650円(税込)
書籍情報:openBD
女ふたり、暮らしています。 キム・ハナ、ファン・ソヌ著
[レビュアー] 小島慶子(タレント、エッセイスト)
◆友人同士、幸せも波乱も
友達との二人暮らし。あなたはしてみたい?
ずっと一人暮らしをしてきた四十代の女性二人が、同居を決断した顛末(てんまつ)をかわるがわる綴(つづ)る愉快なエッセイ。二人は、なんと銀行でローンを組んで共同名義で中古マンションを購入!せっせとローンを繰り上げ返済する。
たくさん本を出し、ラジオにも出演するキム・ハナは生来のきれい好きだ。Twitterでフォローし、憧れていた有名編集者のファン・ソヌとリアルでも知り合い、やがてその散らかりまくった家に遊びに行っては、勝手にせっせと片付けるようになる。そして、二人で住めば一人暮らしよりも広い部屋に、そう、浴槽付きの素敵(すてき)な部屋に住めることに気づく。
二人は幼馴染(おさななじみ)でも、恋人同士でも、親戚でもない。二匹ずつ猫を持ち寄り、蔵書を合体させ、片や家中を散らかし、片やそれを片付け、片や抜群に美味(おい)しい料理を作り、片やそれを美味しい美味しいと食べてはキッチンをピカピカにして、一緒に酒を飲み、音楽を聴き、時には大喧嘩(げんか)する。サボりたくても、同居人に軽蔑されないようにちゃんと仕事する。鼻にティッシュを突っ込んだままパソコンに向かう姿も、予想よりもギャラが少なくて落ち込む姿も、大怪我(けが)も転職もそばで見守る。
互いの家族ともすごく仲良しだ。「嫁」ではないから。水漏れを起こした上階のおじさんにはなめられる。女性二人だから。日本以上に少子化が進み、日本と同様に家父長制的な文化の残る社会で、女性たちが感じる息苦しさも綴られる。夫婦の間で起きる問題は友人同士の共同生活でも生じる。外で働く人と、在宅で働く人との家事の不均衡だ。それをちゃんと言語化して乗り越える二人の知性が素敵だ。
読み終えて考えた。性的な関係を結ぶ二人でなくては、一緒に生活を築くことができないのだろうか。恋愛やセックスとは違う形で信頼関係を結び、敬いあい、労(いたわ)りあって生きることだってできるはずだ。私も二人に混ざりたい。人と人の間にある尊いものを、猫たちがのんびり見ている。
(清水知佐子訳、CCCメディアハウス・1650円)
<キム・ハナ> 1976年生まれ。ラジオパーソナリティー。
<ファン・ソヌ> 1977年生まれ。雑誌編集者。ともに韓国在住。
◆もう1冊
大原扁理著『いま、台湾で隠居してます』(K&Bパブリッシャーズ)