『災害とたたかう大名たち』
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『災害とたたかう大名たち』藤田達生著
[レビュアー] 産経新聞社
江戸時代、地震・火山噴火・火事・水害・疫病・飢饉(ききん)などに襲われた領民を大名はいかにして保護してきたのか。三重大副学長の歴史家がお膝元の藤堂藩を中心にその実相を読み解いていく。
災害時こそ大名にとって支配の正当性を演出する絶好の機会、と著者はいう。有能な為政者は藩財政を傾けてまで、金銭給付や食料配布、建材支給、無償の医師派遣を迅速に行い、さらには犠牲者鎮魂の儀式まで催していたという。
こうして領民との信頼関係の醸成に成功した藩こそが雄藩に飛躍していったという事実を、現代の為政者は知っているのだろうか。(角川選書・1870円)