<東北の本棚>一本気な「快男児」の姿

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クルマ平八郎残日録

『クルマ平八郎残日録』

著者
天野平八郎 [著]
出版社
PHPエディターズ・グループ
ISBN
9784909417787
発売日
2021/05/14
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>一本気な「快男児」の姿

[レビュアー] 河北新報

 仙台トヨペットの社長などを務めた天野平八郎氏が自身の歩みと出会いをつづった。一本気でチャレンジ精神に富む「快男児・平八郎」の姿が浮かび上がる。
 著者は1935年生まれで、千葉大卒業後、東京トヨペットに入社。60年前後のモータリゼーションの黎明(れいめい)期、新人セールスマンとしてトラックの販売に奮闘する。
 真夏の営業に回っていると、社用車が通り掛かり、運転席の先輩が「会社まで乗せてやる」。ところが、助手席の先輩は「まだ(午後)4時半じゃないか、もう少し回ってこいよ」と突き放す。その時意地悪に感じた言葉こそ「本当の親切」なのだと後に気付く。
 経営の立て直しに尽力した山形トヨペットの社長時代は、幹部と共に知恵を絞った。83年に発売した新型コロナのキャッチフレーズは「山形県人が設計したコロナ-郷土の道を知り尽くした走り」。設計を担った鶴岡市出身の安達瑛二氏を前面に掲げて県民の心をつかみ、10年かかるとされた社の再建を4年で成し遂げた。
 過ぎ去った日々をこれほど鮮明に語れるのは、一期一会を大切に、物事と誠実に向き合ってきたたまものだろう。(志)
   ◇
 PHPエディターズ・グループ03(6204)2931=1650円。

河北新報
2021年7月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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