薬のプロの賢い使い方
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
コロナ禍以降、薬局やドラッグストアに足を運ぶ機会が増えた方は多いことだろう。だが、店頭に並ぶ多種多様な市販薬のどれがよいかわからず、CMでよく見るブランドを適当に買ってしまうことがほとんどではないだろうか。しかし市販薬は侮れず、病院の処方薬と同等のものもあれば、乱用などに陥りかねない危険なものもある。
久里建人『その病気、市販薬で治せます』は、薬局で迷わぬための実用的なガイドブックだ。外用鎮痛薬の湿布と塗り薬はどう使い分けるか、添付文書はどこを読むべきか、薬の使用期限はどのくらいかなどといった、なかなか知ることのできない事柄の他、痔や水虫、発毛剤など人に知られたくない薬の良し悪し、漢方薬の科学的な裏付けなど、知っておいて損はない情報がまとめられている。
本書でもうひとつ重要なのは、薬剤師という薬のプロの使い方だ。症状に合わせた薬の選び方、避けた方がよい飲み合わせといったことはもちろん、病院を受診した方がよい症状かどうかといったことまで相談に乗ってくれる。医師よりも身近で、優れた知識を持つ彼らを有効利用せぬ手はない。最近、給料が高すぎるなどと叩かれがちな薬剤師だが、それは高性能家電を使いこなしもせずに、値段にだけ文句を言うようなものだ。信頼すべきは、恐怖を煽るだけのいい加減な記事や、インフルエンサーのバズったツイートではなく、確かな経験と知識を持ったプロの一言だ。