【児童書】『がっかり妖怪大図鑑』村上健司著

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【児童書】『がっかり妖怪大図鑑』村上健司著

[レビュアー] 平沢裕子

■怖くない トホホな姿

日本各地の民話や伝承に登場して語り継がれてきた妖怪。怖いものと思われがちだが、思わず笑ってしまったりまぬけだったりなどいろいろなタイプがいる。妖怪を通じて子供に日本の文化を伝え、興味を持ってもらおうと企画された本書。子供にも親しみやすいように〝がっかり〟のキーワードで厳選した109体を紹介している。

例えば、新型コロナウイルスの感染拡大で一躍有名になった「アマビエ」。病気や農作物の出来を予言する妖怪だが、アマビエもがっかり妖怪の一体。なぜなら、病気がはやったときに「自分の姿を描き写したものを見せればよい」と言うだけで、「病気が治る」や「病気にならない」とは言っていないから。他にも、手に汗にぎるほどのおならが出る奇病が流行すると予言した「スカ屁(べ)」や、尻の穴を串でほじくり、その串についたものをなめろと強要する「柿男(かきおとこ)」など、トホホなエピソードが満載だ。

小学生から読めるように総ルビ仕様。民話伝承好きの大人も楽しめる。(誠文堂新光社・1320円)

平沢裕子

産経新聞
2021年7月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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