リボルバー 原田マハ著 幻冬舎

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リボルバー

『リボルバー』

著者
原田 マハ [著]
出版社
幻冬舎
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784344037694
発売日
2021/05/26
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

リボルバー 原田マハ著 幻冬舎

[レビュアー] 南沢奈央(女優)

ゴッホの自殺 謎の拳銃

 ゴッホの自殺現場とされる場所の付近から、地中に埋まっていた一丁のリボルバーが発見された。そしてそれはゴッホが自殺に使用した可能性があり、ファン・ゴッホ美術館で「ゴッホと病」展にも展示された経緯をもつ――と、まるで小説の設定だが、このリボルバーは実在する。実際に2019年、パリでオークションに出品されて高値で落札された。

 史実を基にしながら本書で描かれるのは、経営危機に直面しているオークション会社に持ち込まれた一丁のリボルバーを巡る物語。持ち主のサラという女性曰(いわ)く「ゴッホが自殺に用いたリボルバー」だが、それを受け取ったゴッホとゴーギャンの専門家である主人公・冴(さえ)が調べていくと、実は「ゴーギャンのリボルバー」と呼ばれる代物だったことが分かる。しかも「ゴッホと病」に展示されたものとはまた別物……。

 果たしてこのリボルバーは何なのか。そもそもゴッホは自殺だったのか。“悲運の画家”ゴッホとゴーギャンは本当に不幸せだったのか。ゴッホやゴーギャンを生き生きと描き、史実の裏にはこんな真実もあったのではないかと思わせてくれる、アートミステリーの真骨頂である。

 ふたりの画家の共同生活。ゴーギャンが去った直後に起きた耳切り事件、ゴッホの自殺、告別式にも来なかったゴーギャン。本書で生きるふたりは、件(くだん)の大きく取り沙汰されがちな出来事から想像するふたりの関係性とは全く違うものだった。ゴッホが「どこまでも成長するひまわり」で、ゴーギャンが「無条件で光を与える太陽」と表現されているのが胸に残る。本を閉じてカバーにあるゴッホのひまわり、カバーを外して表紙にあるゴーギャンのひまわりを見れば、明るく強い生命力を持った本人たちに会えたような気分になる。

 また、著者本人が本書を戯曲化した舞台が10日に東京・渋谷のPARCO劇場で開幕。どう体現されるのか、合わせてチェックしたい。

読売新聞
2021年7月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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